米Metaはこのほど、AIを活用した広告ソリューションについてラウンドテーブルを開催した。収益化責任者を務めるJohn Hegeman(ジョン・ヘゲマン)氏が、FacebookやInstagramなどのプラットフォームにおけるAI(Artificial Intelligence:人工知能)を活用した広告ソリューションの重要性と、広告パフォーマンス向上への貢献について紹介した。
MetaはAIの旅路のさなか
John Hegeman氏は冒頭、「当社はAIの旅路のさなかにあると言っていいだろう。AI活用は今に始まったことではない」と強調した。Facebookプラットフォームは2006年には、AIを活用したニュースフィードをリリースしている。
また、2013年にはYann LeCun(ヤン・ルカン)氏と共同でFundamental AI Researchを立ち上げたほか、2016年に機械学習フレームワーク「PyTorch」をリリース。2023年にはLLM(Large Language Models:大規模言語モデル)「Llama2」や、「クリエイティブ生成AI」なども発表した。
2024年に入ってからも、広告パフォーマンスを向上させるための広告自動化ツールセット「Meta Advantage」を動画フォーマットで利用可能にし、日本を含むすべての広告主向けに提供することを明らかにしていた。
同氏によると、2023年にはAIによるレコメンデーションの改善によって、Facebookではユーザーの滞在時間が約7%、Instagramでは約6%、それぞれ延長したそうだ。現在われわれがInstagramで見ているコンテンツは、約40%がAIによりレコメンドされたものである。
AIを使って広告主のパフォーマンス向上に貢献
同社プラットフォームのAIはマーケターや広告ビジネスのパフォーマンスも支援する。その一例として、シンガポールに拠点を置く家具メーカーのCastleryでは、広告配信の自動化キャンペーンであるAdvantage+Shopping Campaignを利用した結果、ROAS(Return On Advertising Spend:広告の費用対効果)は従来の2.3倍、コンバージョン率が59%増加するなどの効果が得られたそうだ。
同様に、Advantage+ catalog広告は、ユーザーの興味や関心に合わせてカタログの中からおすすめの商品を自動的に配信するサービス。静止画像の代わりにブランド動画やデモ動画などのクリエイティブを配信できるようアップデートが施された。このように、AIを活用して動的な広告配信を可能とすることで、同社は広告主のパフォーマンス向上を支援するとのことだ。
Hegeman氏はInstagram広告のパフォーマンス向上を支援するための施策として、リマインダー広告を紹介した。同サービスは新商品の発売開始やイベント開催などの日時を入力することで、適切なタイミングで事前に認知度向上や期待値の醸成、検討機会の提供が狙えるのだという。広告には新商品やイベントへの外部リンクも掲載でき、興味をその場で購買行動につなげられるそうだ。同機能は今後、リールなど短尺動画で提供される予定。
同社が提供するFacebookコラボレーション広告は、小売店のマーケティングキャンペーンを支援しWebサイトやEC(Electronic Commerce:電子商取引)サイト、モバイルアプリでの売上増加が狙えるサービス。ブランド商品用のカタログセグメントを使ってダイナミック広告を配信し、ユーザーの購買につなげる。同社のテストによると、投資リターンが14%増加し、顧客獲得単価が13%減少したことが明らかになっているとのことだ。
生成AIで変わるこれからのショッピング
John Hegeman氏は今後の生成AIについて、マルチモーダル化すると予測している。つまり、文章だけでなく画像や動画、音楽などを自由に生成できるようになるということだ。また、これらのAIは統合され、画一的でシームレスな体験を提供するようになるという。
加えて、責任のある生成AIの活用も模索が進み、ユーザーがより安心して生成AIを使えるような環境も整っていくとしている。さらに、同氏が「最も重要なこと」として紹介したのは、オープンな基盤の上に構築される生成AI。同社はLlama2やPyTorchなどを公開しており、これらのオープンなソフトウェアインフラストラクチャを活用して、AIやAIが推進するビジネスの議論に誰もが積極的に参加できることが重要なのだそうだ。
また、生成AIを使った今後の小売ビジネスのビジョンを次のように示した。2024年には、企業向けアプリの40%が会話型AIを搭載し、2026年には生成AIがWebサイトやモバイルアプリのデザインの60%を自動化するという。そして、2030年までにチャネルレスショッピングが、よりシームレスな同一の体験としてつながっていくようだ。
Hegeman氏は「消費者はフォローすると決めたブランドだけではなく、AIによりレコメンドされた広告も見ている。最近では特に動画コンテンツをよく見ているようだ。こうした大きなトレンドを捉え、適切なチャネルで広告をどのように展開するのかを考えるべきだろう」と参加者にメッセージを送っていた。
また、生成AIの活用について「生成AIに関するテクノロジーは日進月歩で変わっている。まずは新しいツールをどんどん使って実験を繰り返すことで、各ブランドの状況に応じた学びが得られるだろう。スピード重視でまずは試してみてほしい」とも語っていた。