ロケットの打ち上げというと、日本では鹿児島県の種子島を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。そのほか、同じく鹿児島県の内之浦や、北海道の大樹町でも打ち上げが行われているが、いずれにしても本州からは遠く、飛行機を使ったりするので、旅費が結構な額になる。行きたくてもなかなか行けない、という人が多いかもしれない。
しかし、本州の真ん中あたりに、新たな発射場が誕生したのをご存じだろうか。それは、和歌山県串本町の「スペースポート紀伊」である。民間の宇宙企業・スペースワンが開発した「カイロス」ロケットの専用発射場として建設されたもので、2024年3月13日にはここで、初号機の打ち上げが行われた。
既報の通り、初号機の打ち上げは残念ながら失敗に終わってしまったものの、同社は原因究明と対策が完了し次第、2号機の打ち上げを目指すとしている。筆者は今回、現地で初号機の打ち上げを取材してきたので、本稿では、見学方法などをまとめてみたい。次回以降、見学に行くときの参考にして欲しい。
どうやって行ける?
まずは位置関係を確認しておこう。串本町は、紀伊半島の南端にある。南紀エリアには通常、陸路であれば、名古屋方面からの東回りルート、大阪方面からの西回りルートで行くことになる。前述の既存3カ所の発射場に比べると、大都市圏からの距離が近いのは特筆すべき点だろう。
そのほか、高速バスや飛行機も利用できる。高速バスは、池袋から勝浦温泉へ約11時間。飛行機は、羽田空港から約70分で南紀白浜空港に到着する。
筆者は今回、紀伊勝浦駅そばの民宿に泊まったのだが、東京からは新幹線のぞみで名古屋まで約1時間40分、そこから特急南紀に乗り換えて約4時間で到着。名古屋からの時間がちょっと長いが、それでも飛行機に乗らずに行けるというのは、手軽で良い。打ち上げを見に行くのに飛行機に乗らないというのは、ちょっと不思議な感じがした。
ところで特急南紀は、2023年7月より、新型車両「HC85」系が営業運転を開始した。このHC85系では、新たにハイブリッド方式を導入。通常はエンジンのみで走行するが、たまにバッテリアシストに切り替わり、その状況が随時、車内前方のディスプレイに表示されていたのはちょっと面白かった。
公式の見学場は、射点を挟んで反対側の2カ所に用意されている。南西側が田原海水浴場(串本町)、北東側が旧浦神小学校(那智勝浦町)で、どちらも射点からの距離は1.7km程度と、種子島などと比べると、かなり近くで見られるのが魅力。ただその反面、射点との間には山があって、射点に立つロケットが直接見えないのは残念な点だ。
見学場は有料で、事前購入が必要。チケットが無いと、行っても入場できないので注意して欲しい。チケットは、カイロスロケットの打ち上げ応援サイトで購入が可能だ。今回は、打ち上げの1カ月半前の1月29日に販売が開始。両会場それぞれ2,500枚のチケットが、わずか2日で完売になったそうなので、発売時期には注意しよう。
ロケットは基本的に、あまり人がいないところで打ち上げるため、公共の交通機関では行きにくく、現地でレンタカーを借りるのが一般的だ。しかし、カイロスの見学場の大きな特徴は、駅から近いこと。どちらも歩いてわずか数分の距離なので、運転免許を持っていない人でも、困ることは無い。
一方、自動車で行く人には、パーク&ライド付きのチケットが用意されている。これは、指定された駐車場まで自動車で行って、そこからバスに乗り換えて見学場へ行くという方式。見学場へのアクセスは国道42号しかなく、各自が自動車で向かえば大渋滞の発生は必至。パーク&ライドは、それを回避するための対策だ。
筆者注:見学場付近は前後1kmが駐停車禁止、そこからさらに2kmは駐車禁止になっており、自動車で向かっても、近くで見る場所はないことに注意
料金は、入場チケットのみの場合が3,000円。パーク&ライドを利用するときは、バス代が追加されて5,000円となる。このどちらで行くかは、購入時に選ぶ必要がある。筆者は今回、電車で打ち上げを見に行くという体験がどうしてもやってみたかったので、入場チケットのみの方を選択した。