米国政府が2023年末に、中国向け半導体関連の輸出規制強化のために中芯国際集成電路製造(SMIC)の半導体部材サプライヤに対して輸出許可を差し止める書簡を送っていたことが、事情に詳しい関係者の話で分かったと米国メディアが報じている

これまで米国は中国企業に対する先端半導体製造装置などの輸出制限を課してきたが、そうした状況下においてSMICは7nmプロセス、そして5nmプロセスを採用したデバイスをHuaweiのスマートフォン(スマホ)向けに製造を進めており、輸出規制の効果が十分に発揮されていないことからさらなる規制強化に向かうものと見られている。

米国メディアの報道によると、関係者の話として、少なくとも今回、各サプライヤに送られた書簡を通じてマサチューセッツ州に拠点を置くEntegrisが数百万ドル相当のSMIC向け製品輸出を差し止められたという。

同社は半導体製造装置メーカーではなく、液体や気体のろ過精製部材(超微細フィルタ)、ウェハやマスクの保管・搬送容器(FOUPなど)など、製造装置に関連するさまざまな部材を供給するメーカーであり、米国政府の規制が装置メーカーのみならず周辺部材メーカーにも及んできたのではないかという見方がでてきている。なお、同社は、2023年5月に半導体プロセス用ケミカル事業を富士フイルムに売却している。

Entegrisは、これまで適正な輸出ライセンスに沿って出荷を続けていたが、米商務省からSMICへの製品販売許可を停止する書簡を受け取った後、ただちに出荷を中止したとコメントしているが、この件を報じたロイターではEntegrisが米国の法令や規則に違反したかどうかは確かめられなかったとしている。また、Entegrisに関する報道に続く形で、ほかの半導体装置部材メーカーへの規制に関する報道は出ておらず、各社ともに表立った声がでてきていないことから、米国政府の規制の実態が現状、どのようになっているかを見通すことが難しい状況となっている。

2024年1月には、オランダ政府が一度ASMLに与えていた中国企業に向けた露光装置の輸出許可の取り消しを行っているが、この件も米国政府からの要請があったとされていることも踏まえると、今後、米国政府による半導体製造装置、付帯設備、関連部材に対する対中輸出規制のさらなる強化が進められるものと思われる。