【データに見る「ECの地殻変動」】<第23回>物流問題の解決はデータによる状況の可視化から

2024年が幕を開けた。そう、今年のEC業界の最大のテーマの1つは物流問題だ。

と言っても物流問題が2024年に突然、表面化したわけではない。EC市場規模の拡大に伴う宅配ドライバーの労働環境の悪化など以前から物流業界では課題が顕著化していたことは既知の通りである。

とはいえ何についてどれくらい問題があるのか数字できちんと理解している人はおそらく少ないだろう。そこで今回は4つのデータから物流業界の現状を俯瞰してみたい。

<運転手不足はひっ迫>

まずは労働力について。2023年11月時点のトラックドライバーの有効求人倍率は2.78倍と高い。全体平均が1.27倍、個別にみると事務従事者は0.43倍、機械組立従事者は0.79倍なので、ドライバーの人材不足のひっ迫感が数字から伝わってくる。

今年から時間外労働上限規制が始まるのでこの数値はさらに高くなるだろう。しかし介護サービスは3.53倍、建設従事者は6.16倍とトラックドライバーよりも高い点には留意したい。つまり人材のひっ迫はトラックドライバーだけではない。

<再配達率は横ばい状態>

2点目は再配達率について。2023年10月時点の再配達率は11.1%だ。ピークは2019年4月の16.0%であり、緊急事態宣言が初めて発令された2020年4月に8.5%と急改善した。

だが2020年10月には11%台にあえなくV字反転し、その後は横ばいが続いている。参考までに筆者試算のECでの年間宅配便個数は、約45億個なので、約5億個が再配達されている計算だ。

なお2021年に政府が掲げた再配達率の目標値は2025年時点で7.5%。このままだと目標達成は厳しいだろう。

<宅配ボックスはまだまだ>

3点目は宅配ボックスの設置率について。再配達率改善の鍵は、置き配の推進とみる。そのためには宅配ボックスの設置率の上昇は必要不可欠な要素である。

だが、2021年度の新築分譲マンションでの設置率は92.4%と高い一方、中古分譲マンションになると50.2%。賃貸住宅では34.2%と低くなる。

新築の注文住宅でも設置率は28.4%に過ぎない。宅配ボックス設置の補助金支給など政府や自治体による制度面の後押しはあるが、数字をみると設置率は十分ではない。

<積載率はV字回復中>

最後はトラック輸送の積載率について。この数値は分母を輸送能力、分子を実際の輸送量(トンキロ)で計算した輸送の効率性を示す指標である。

意外と注目されていないが2022年の積載率は39.8%と3年連続で上昇している。ただし2013年の41.1%をピークに2019年には37.7%にまで下落した。

すなわち現在、V字回復中である。積載率は100%が理想だが現実的には不可能だろう。しかしCO2排出量削減の点からも積載率の上昇は推し進められるべきである。

以上、4つのデータを紹介したが、全て輸送・配送に係るデータである。これらに荷役や保管といったセンターサイドのデータを加味して多角的に分析すれば、異なる課題同士の関係性が可視化され有効打が見えてくるだろう。

関係者の多くは物流問題を定性的なイメージで捉えているのではと筆者は危惧している。テーマごとにそれぞれの状況についてデータを使って可視化することが解決に向けた唯一の道と考える。関係者の対応に期待したい。