コアスタッフは1月16日、同社が長野県佐久市に建設を進めている2024年7月に竣工予定の新物流センターに関する説明会を開催。半導体業界にも影響がおよぶ物流の2024年問題の解決に向けた同物流センターの活用などを提案した。

  • 2024年秋から稼働する予定のコアスタッフの新物流センターの模型

    2024年秋から稼働する予定のコアスタッフの新物流センターの模型。出っ張っている部分に自動倉庫機能が搭載されるほか、奥まった部分にも将来の自動倉庫化を可能とするエリアが確保されているという

同社代表取締役社長の戸澤正紀氏は、2024年現在の日本の半導体業界を取り巻く社会課題として、「少子高齢化」「天災・シリコンサイクル」「物流の2024年問題」の3つを提示。少子高齢化に伴う従業員不足や、天災やシリコンサイクルによる工場の操業停止に伴う半導体の不足や、市場低迷に伴う過剰在庫の発生に加え、物流の2024年問題による配送納期の長期化や物流コストの上昇などの問題も顕在化してくることが懸念されるという。

  • コアスタッフ代表取締役社長の戸澤正紀氏

    新物流センターの活用方法の説明を行ったコアスタッフ代表取締役社長の戸澤正紀氏

この物流の2024年問題は、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の上限規制が年間960時間に制限されるようになるということで、これにより輸送能力が不足し、物流が滞る可能性が出てくることが指摘されている。「燃料費の高騰などに加え、物流業界の働き方改革もあり、物流コストが安くなっているという話は聞かない。4月以降、物流の2024年問題が顕在化してきたときにどういったことが起こるのかは不透明」と戸澤氏は現状の見通しを説明。そこで課題になるのが、中継輸送拠点の見直しなど、配送業務全体の再構築。「配送(輸送)のためのスペースの確保が課題になってくる。すでに日本全土の交通の便のよい土地は誰かが確保している状況で、かなりスペースが不足している状態。実際の配送手段が確保できるのかどうかも問題になってくる」とし、そうした顕在化する問題に向けて同社では、複数の顧客からコアスタッフの新物流センターに貨物を送ってもらって、コアスタッフが顧客各社に代わって、配送を担当しようというアプローチを採用することを計画しているとする。「コアスタッフが人やスペースを提供することで、荷物の発送元を1つにしてしまおうというアプローチで、顧客は自社で人やスペースを確保する必要がなくなるというメリットを享受することができるようになる」と、このアプローチのメリットを強調する。

  • コアスタッフが人やスペースを提供

    コアスタッフが人やスペースを提供して、顧客の荷物をコアスタッフの拠点に集約してもらうことで、顧客は物流や在庫管理の手間を省くことが可能になるメリットを得られるようになるという

総工費50億円を投じた巨大物流拠点を佐久市に開設

この顧客からの荷物の集積所となるのが、同社が2024年7月の竣工を目指して長野県佐久市に建設を進めている新物流センターとなる(従来の物流センターも佐久市内に設置されている)。

敷地面積は既存の物流センターの約9倍となる約1万6000m2(従来施設は約1800m2)、地上4階建てで延べ床面積は約5倍となる約1万5000m2(同約2580m2)。その広さを生かして、全体として100万点の製品を扱うことが可能になるという。

  • 新物流センターの概要

    新物流センターの概要

また、生産性向上に向けて、新物流センターには2種類の自動倉庫が内包される。1号機は4階建て相当の高さ20m弱に対応したフリーサイズケース自動倉庫。7488ケースの保管が可能で、1時間あたり450ケースの入出庫ができ、主に1つからの注文に対応する製品の保管を担うことが期待されている。2号機は2階建て相当の高さに対応したダブルディープシャトル。7056ケースの保管が可能で、1時間あたり2000ケースの入出庫が可能。この2つの自動倉庫で全体100万点のうち、10万点ほどが保管できる見通しで、自動化に伴い、現状の3~5倍の生産性向上を見込むとしている。また、残りの90万点ほどは4階建ての建屋の残りの空きスペースに保管され、人手やエレベータの乗降可能なAGVを活用して入出庫作業が行われることになるというが、現状の物流センターの保有点数は10万点ほどであり、新物流センター稼働後もしばらくは保管場所に余裕がある見通しだという。

  • 自動倉庫の概要

    自動倉庫の概要

ちなみに新物流センターにはもう1か所、4階建て相当の高さまで吹き抜けたエリアを確保しており、将来的な拡張の余地も残しているという。

この新物流センターの総工費は自動倉庫や、人材確保の観点から併設される2歳未満児を対象とした託児所なども併せて約50億円とのことで、同社史上最大の投資案件となるという。

調達から配送まで、新物流センターを活かして付加価値を提供

戸澤氏は、「新物流センターの稼働を機に、半導体業界の問題解決に向けた取り組みを加速させていきたい」としている。半導体を活用してさまざまなモノを開発・製造する顧客企業の目線で半導体サプライチェーンを考えると、「設計・開発」から始まり、「部品調達」、「物流」、「製造」という流れになると同社では見ている。「こうしたサプライチェーンにおいてコアスタッフが関わるのは部品調達と物流だと思っている。ここで新たに顧客の購買業務一式請負(POS:Procurement Outsourcing Service)ならびに保管・物流業務一式請負(LOS:Logistics Outsourcing Service)、その両方の一括請負(PLOS)をやっていきたいと思っているほか、既存サービスである顧客の余剰在庫の削減を請け負う委託販売などもやっていきたい」とし、今後、できる限り顧客の懐深くに入っていくことで、そうした業務を肩代わりしていきたいとする。

  • 顧客視点の半導体サプライチェーンと、コアスタッフが関わる分野

    顧客視点の半導体サプライチェーンと、コアスタッフが関わる分野。POSとLOSの新たに提供することで、TSMCが半導体メーカーの製造を肩代わりしたように、部品調達と物流分野で似たような受託サービスベンダになれる可能性があるという

部品調達の主なターゲットは中小企業の顧客。そうした複数の顧客をまとめることでコアスタッフがそうした企業群が必要とする半導体/電子部品の数をまとめてサプライヤに発注することで大口顧客としての提案を可能とするほか、物流としては、これまでも行ってきた顧客の余剰在庫をコアスタッフが預かり、顧客に代わって削減の手助けを行うサービスを軸としていくとする。「単なる物流業務だけでなく、そこで動いていないものも削減できることがポイント。PLOSになれば、コアスタッフが顧客に代わってモノを買って、それを売るという形になる。すぐには受け入れられないかもしれないが、部品調達の高度化、物流人材の後継者育成問題なども聞こえてきており、5年後には相当な案件数が受け入れられていると思う」と長期的視点に立った施策であることを戸澤氏は説明する。

  • POS、LOS、PLOSのイメージ
  • POS、LOS、PLOSのイメージ
  • コアスタッフが提供するPOS、LOS、PLOSのイメージ

新物流センター開設キャンペーンの実施を計画

新物流センターは2024年7月に竣工、2024年秋(9月ごろをめど)からの稼働を予定している。現在、竣工まで2/3程度のところまで作業が進み、完成が見えてきたこともあり、このタイミングで同社は「新物流センター開設記念」と銘打った「物流受託サービス 在庫保管料1年間無料キャンペーン」を実施することを明らかにした。

物流受託サービスには大きく分けて「入荷作業」「出荷作業」「棚卸作業」「在庫保管」の4つの業務で顧客から費用を受け取るが、その中でも在庫保管がもっともコスト負担が大きいという。このキャンペーンは、その在庫保管費用を月100万円を限度額(超過分は支払いが発生)とし、3年間継続利用を前提にそのうちの1年間を無料で提供しようというもので、先着10社限定のサービスとなる。

  • 新物流センター開設記念キャンペーン

    新物流センター開設記念キャンペーンとして、先着10社に保管費用の1年間にわたって毎月100万円まで無料にするサービスを提供するという。申し込みはインターネプコンの同社ブースにて受け付けるとしている

受け付け方法は、1月24日~26日にかけて東京ビッグサイトにて開催される「第38回インターネプコン ジャパン」の同社ブースにて、同社スタッフを通じて、3年契約であることや、キャンペーン対象企業となった場合は同社Webサイトなどにサービス利用企業として社名が掲載されることなどの条件説明を受け、それを理解した上で、申請書への記入を行う形となるという。

なお、新物流センターの稼働に伴い、これまでの物流センターで行っていた真贋判定サービスなども新物流センターに移管されることとなり、従来物流センターはがらんどうとなることから、今後の予定は未定とのことで、自社で何らかの活用を行っていくのか、他社に貸し出すなど新たなビジネスの可能性を模索するのか、さまざまな可能性を探っていきたいとしている。