総合研究大学院大学(総研大)と国立極地研究所(極地研)は12月26日、営巣地から海へ移動するアデリーペンギンの群れに属する複数個体の行動をバイオロギング手法で記録。得られた移動経路や行動記録を詳細に解析したところ、ペンギンたちが休息のタイミングを互いに調節し合うことで移動速度を同調させ、群れを維持し続けることを解明したと共同で発表した。

  • アデリーペンギン

    アデリーペンギン(出所:極地研Webサイト)

同成果は、総研大 複合科学研究科 極域科学専攻の今木俊貴大学院生、同・國分亙彦助教(極地研 生物圏研究グループ兼任)、東北大学 学際科学フロンティア研究所の塩見こずえ助教、総研大の高橋晃周教授(極地研 生物圏研究グループ兼任)らの共同研究チームによるもの。詳細は、動物行動学に関する全般を扱う学術誌「Animal Behaviour」に掲載された。

多くの動物は、同じ種の個体同士で群れを作ることがわかっており、それをいつ、どのようにして作り、維持しているのかを理解することはその機能を考える上で重要だとしている。近年、動物に行動記録計を取り付けるバイオロギング手法によって、個体の移動経路や行動が詳細に追跡できるようになったものの、群れの中にいる個体同士の相互作用が明らかにされた研究は、霊長類など社会性の高い動物群に限られていたという。

中でも、南極で繁殖するアデリーペンギンは、営巣地周辺や採餌場所である海などにおいて、同種同士で集まって群れを作る様子がこれまで観察されてきたが、このような群れがどのくらいの時間、またどうやって維持されているのか、個体同士の相互作用が明らかにされた研究はなかったという。

そこで研究チームは今回、抱卵期のペンギンにGPSや加速度計を搭載した行動記録計を取り付け、営巣地から約40km離れた海氷縁まで移動する間の14個体から記録を取得し、そのうち3つグループの中にいた計7個体のペンギンの行動を調べることにしたとする。

  • 互いの移動速度が顕著に同調している

    (a)昭和基地近くのまめ島から海へエサを取りに出かけるペンギン14個体の移動軌跡。(b)3つのグループ内でのペンギンの移動速度の時間的変化。互いの移動速度が顕著に同調している(出所:極地研Webサイト)

その結果、同じグループにいる個体は約40kmの移動中、平均17時間にわたって互いに移動速度を同調させて群れを維持し続けていたとする。さらに、移動速度の同調には互いの休息のタイミングを合わせることが重要であり、グループ内での先頭個体や休息を開始する個体は頻繁に入れ替わることが明らかにされた。これらの結果は、長距離を移動中のペンギンが互いに行動を調節し合って群れを維持していることが示されているとし、このような群れの維持の仕組みは、一部の個体がリーダーになる霊長類の群れとは異なっており、ペンギンの群れがゆるやかな個体間の関係によって形成されていることを示唆する点で重要だとした。

  • コロニーから海氷上を移動して海に到着するまでの間、記録計を着けた個体のうちどちらが先頭の位置にいたかを示す図

    コロニーから海氷上を移動して海に到着するまでの間、記録計を着けた個体のうちどちらが先頭の位置にいたかを示す図。3つのグループのそれぞれの中で、先頭の位置にいた個体が頻繁に入れ替わっていることが明らかになった(出所:極地研Webサイト)

研究チームは今後、より多くの個体を同時に追跡することにより、群れの形成がペンギンにどのような利益をもたらしているのか、たとえば効率的な餌場の発見に寄与するのかなどの検証を考えているとしている。