小惑星「ベンヌ」のサンプルを示差熱天秤で分析

リガクは、アメリカ航空宇宙局(NASA)の小惑星探査機「オシリス・レックス」が採取し、2023年9月に地球に持ち帰った小惑星「ベンヌ」の砂粒(試料、サンプル)に対して、自社の示差熱天秤-ガスクロマトグラフィ質量分析測定システム「TG-DTA/GC‐MS」を用いて分析を行ったことを発表した。

  • 「TG-DTA/GC‐MS」

    リガクの示差熱天秤-ガスクロマトグラフィ質量分析測定システム「TG-DTA/GC‐MS」(出所:リガク)

今回の分析にあたっては日本の小惑星探査機「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星「リュウグウ」の試料分析も行った経験を有する北海道大学大学院理学院の圦本尚義 教授ならびに東京大学(東大)大学院の橘省吾 教授が立ち会い、実際の作業はリガクアプリケーションラボ熱分析グループによって実施された。

  • 圦本尚義教授と橘省吾教授

    分析作業に立ち会う北大の圦本尚義 教授(左)と東大の橘省吾 教授(右) (出所:リガク)

リガクは今回のベンヌの試料分析に先立つ形で、2019年6月にリュウグウ試料分析プロジェクトに共同研究者として参画するなど、以前より小惑星サンプルリターンの研究に関わってきた経緯がある。はやぶさ2の2020年12月の地球帰還後の分析としては2021年にリュウグウの試料に含まれることが想定される元素について、波長分散型蛍光X線分析装置「ZSX Primus IV」を用いて含有率を決定する取り組みを行ったほか、今回の分析でも用いられたTG-DTA/GC‐MSを用いた測定から、従来もっとも始原的で太陽系の元素組成を反映していると考えられてきた炭素質コンドライト隕石とリュウグウ試料では、含まれている水の存在状態が異なることを明らかにするなど科学的成果を提供してきており、これらの分析結果は、圦本教授がチームリーダーとして研究を進めていたはやぶさ2ミッション初期分析チームの化学分析チームによる論文に示され、米国科学雑誌「Science」に掲載された。

ベンヌのサンプルを熱分析した理由

リガクによると、今回の熱分析は、試料に含まれる水分量と炭素量を測ることで、ベンヌが小さいダストのような存在から惑星に至るまでの歴史を知る有用な知見を得ることを目的に行われたものだという。他の分析手法でも水と炭素総量の測定は可能であるが、熱分析で分けて視ることでより詳細な知見を得ることができるとのこと。

圦本教授は「太陽系がどのように出来上がったのかについてまだ分からないことが多いため、分かるようになるまでひとつひとつ分析を重ねて理解を深めていき、最終的に分かりやすく伝えられるようにしたい」とコメント。なお、同測定はNASA分析チームの研究の1つのパートであり、リュウグウの成果との比較分析も予定されているという。