米国による対中半導体規制の中、中国の半導体メーカーが先進的な半導体プロセスを活用し、独自に半導体開発能力を強化していると中国(香港)、韓国、台湾などのメディアが一斉に報じている。
主な内容しては、12月9日から13日にかけて米サンフランシスコにて開催された「第69回 IEEE国際電子デバイス会議(IEDM 2023)」にて、中国のDRAMメーカーChangXin Memory Technologies(CXMT)が、DRAM向けGAAトランジスタを開発し、次世代DRAMへの実装に成功したと発表したことが取り上げられている。GAAはSamsung Electronicsが競合ファウンドリに先駆けて3nmロジックプロセスで採用したトランジスタ構造で、TSMCも2nmプロセスからの導入を予定するなど、今後の半導体プロセスの微細化を実現するためには必要な技術とみなされている。
このような構造の半導体チップの設計には通常、米国の輸出規制対象となるテクノロジーが含まれることになるため、韓国や台湾のDRAM業界関係者から、そうした規制のもと、中国の半導体産業がさらなる技術的進歩を続けられるかどうかといった点を中心に注目を集めることになったようである。
ただしCXMTは、中国のNANDサプライヤである長江記憶科技(YMTC)とは異なり、米国のサプライヤから技術を購入するために米国商務省からの特別輸出許可を必要とするエンティティリストには記載されていない。
CXMTは、今回の論文発表について「将来の超微細DRAM構造の実現可能性に関連する基礎研究の成果発表であり、CXMTの現在の製造プロセスとは何の関係もない」と述べたとするほか、同社の輸出管理専門家らは「CXMTが米国の制裁や輸出規制に違反しているといういかなる非難も的外れだ。私たちは、IEDMが促進しようとしているアイデアの自由なシェアが業界の革新と発展に不可欠であると強く信じている」と述べたとしている。GAAトランジスタを設計するには、米国政府が対中規制を行っている欧米EDAベンダのEDAソフトウェアが必要との指摘も一部から出ているが、真相は不明である。
なおCXMTは2023年11月に、中国メーカーとして初めてのLPDDR5 DRAMチップのリリースを行っており、海外の主要メモリメーカーとの技術的ギャップを今後どこまで縮めてくるかが注目されている。