富士通は12月12日、同社の連結子会社で半導体製造の後工程で必要となるパッケージ基板を手掛ける新光電気工業を、政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)などに売却すると発表した。

JICは大日本印刷や三井化学と共同で、TOBなどを通じて総額約6850億円で全株を取得する予定。これに伴い、新光電工は上場廃止となる見通しである。

売却後の株式保有比率はJICが80%、大日本印刷が15%、三井化学が5%となる見込みだという。

富士通は今回の新光電気売却の理由として、富士通が掲げる「事業モデル・ポートフォリオ戦略」に則った、ポートフォリオ変革の取り組みを加速させることを企図するもので、新光電気を売却して得られる現金資産を、収益性の高いデジタル・クラウドサービスを中心としたサービスソリューションといった成長領域への投資および株主還元に振り向けることでさらなる企業価値向上を図っていくとしている。

なお富士通は、これまでにも半導体および半導体関連事業や子会社を次々と売却してきており、半導体関連事業から徐々に撤退を進める一方でIT分野へのシフトを加速させているが、今回の新光電気の売却もそうした事業変革の一環とみられる。一方、JICは、買収によって新光電気がこれまで培った多様な半導体実装技術をもとに、チップレット技術や光電融合技術といった先進半導体パッケージ分野の事業化を強力に支援していくとしている。

半導体から距離を置く日本の電機業界

なお、日立製作所も2018年に日立国際電気の半導体装置事業を売却したのに続き、2023年11月に日立パワーデバイスの全株式と日立グループのパワーデバイス事業に関する海外販売事業を売却することを発表するなど、かつての日本の半導体業界をけん引してきた大手電機メーカーによる半導体および関連ビジネスからの撤退が最近目立ってきている。半導体業界の関係者視点で見れば、これらの半導体関連企業は、将来有望な企業ばかりであると見られてきたが、大手電機メーカーからしてみれば、好不況の波が大きすぎる半導体産業は、安定といった言葉からは程遠く、不安定事業と映っているものと思われる。