米Qlikの日本法人であるクリックテック・ジャパンは12月12日、オンラインでAIの戦略説明会を開催した。説明は米Qlik 副社長兼データ事業本部長のドリュー・クラーク氏が行った。
企業におけるAIの活用に向けた4つの観点
まず、クラーク氏は「生成AIは30年間をかけて培われてきたものだ。30年前に当社はアナリティクス、BIをベースに設立し、インターネットの浸透とともに成長し、ビジネスの現場における意思決定を行う基盤の構築に取り組んできた」と述べた。
同氏によると、テクノロジーとデータ分析の変遷として、2000年代にモバイルコンピューティングでビッグデータとBI(ビジネスインテリジェンス)、2010年代のクラウドコンピューティングでクラウドアナリティクスとデータレイク、そして2020年代の生成AIで拡張されたデータと分析にそれぞれ相関関係があるとした。
クラーク氏は「アクセンチュアの調査では、今後3~5年間で98%の企業AIを活用すると予測している。しかし、現状からどのようにして98%の企業が使うようになるのか。AIは人間の頭脳と同じように動くためには情報が必要であり、どのようなタイプのデータかがポイントになる。分析のために移動・管理されるデータ量は73%増加すると予想されており、データはAIのためにフィードしなければならない」との認識を示した。
同氏は「データの多様性」「ガバナンス」「利用しやすいインサイト」「システムのとの連携」の4つの観点を考慮に入れるべきであり、AIの導入に向けた備えが必要だという。
データの多様性は、構造化に加え、言語、画像などのデータもAIを構築するためには必要となり、ガバンスはデータの使用者、インサイトは人間が理解しやすい形で使えるのか、そして、他システムとの連携により、最終的に人間が判断を下すために必要との見立てだ。
同氏は、特にガバナンスについて「プライバシーやセキュリティの懸念が現実にのものになりつつあるからだ。世界中の政府がどのデータを利用していいのかについて規制をスタートさせており、米国のジョー・バイデン大統領はAIに関するルールが必要との見解だ。また、生成AIのデータに関しては、あらゆるところで訴訟が起きており、AIモデルでデータを使うためにはガバナンスと信用が必須となる」と念を押した。
AI活用を支援する「Qlik Staige」
同社では2023年8月に顧客調査を行い、39%の企業がAI戦略を策定していないほか、現状は従来型AIの利用が大半であるという。そのため、同氏は9月に発表したリスク管理や複雑性排除、AIによる革新を図る組織を支援するソリューション「Qlik Staige」でAIの活用を支援するという。
同ソリューションでは、あらゆるデータをデータレイク、DWH(データウェアハウス)、オブジェクトストアに配信する「AIに対応したデータセット」、パイプラインの効率的な定義と実行を行う「AIが強化するデータ統合と品質」、内部データとメタデータを使用してモデルを最適化する「ファインチューニングとエンタープライズLLM(大規模言語モデル)」までを担い、AIモデルの基盤を構築できる。
このように構築した基盤をもとに、アナリティクスプラットーフォーム「Qlik Sense」で自動機械学習による高度な分析を行う「AIによる探索的分析」、対話型分析を支える自然言語生成の「生成AI」の作成が可能。
ユーザー企業の事例としては、SamsungグループのHarmanではアプリのサイロ化を解消するため、Tableau、Einstein、Salesforceを同社製品に置き換えたことに加え、ChatGPTとQlikを統合した新しいアプリを試験的に導入し、ビジネスチームとテクニカルチームがコンテキストと予測インサイトを共有できるようにしていることなどを紹介。
最後に、クラーク氏は「当社は従来から、お客さまに価値を提供するAIの機能を提供し続けている。当社の製品を用いて、お客さまはAIのための信頼性が高いデータ基盤を構築するとともに、AIを活用した分析でインサイトを発見して行動に移している。さらには、高度なユースケースに向けたAIの構築とデプロイを支援している」と力を込めていた。