米OpenAIは11月21日(現地時間)、サム・アルトマン氏がCEO(最高経営責任者)として復帰することに基本合意したと発表した。アルトマン氏と共に退社したグレッグ・ブロックマン氏(前プレジデント、共同設立者の1人)も復帰する。一方でアルトマン氏の解任に動いた取締役会(理事会)は、3人で構成される初期理事会(initial board)の下で再編成される。

  • OpenAIのCEOに復帰するサム・アルトマン氏

    OpenAIのCEOに復帰するサム・アルトマン氏

OpenAIの理事会が17日に、「理事会とのコミュニケーションで一貫して率直さを欠いていた」という理由で、アルトマン氏に突如解任を言い渡した。

その後、Microsoftがアルトマン氏の受け入れを表明。OpenAIでは、アルトマン氏の解任を決めた理事会に対する反発が強く、最終的に9割を超える社員が理事の辞任を求める書簡に署名。要求が受け入れられない場合、アルトマン氏がMicrosoftで率いるAIリサーチ部門に加わる可能性を示していた。米報道によると、理事会から暫定CEOに指名されたエメット・シア氏(Twitchの元CEO)も、アルトマン氏の解任の正当性を裏付ける証拠を示すよう理事会に求めていた。

四面楚歌に陥り、組織崩壊の可能性に直面したことで、理事会がアルトマン氏との協議を受け入れ、CEO復帰で合意した。シア氏は、4日間の解任騒動について「全ての関係者が正しい行動をとり、安全性を最大化する道筋でした。この解決の一部になれたことを嬉しく思う」とXに投稿した。

初期理事は、ラリー・サマーズ元米財務長官、Salesforceの元共同CEOのブレット・テイラー氏(会長に就任)、そしてQuoraのCEO、アダム・ディアンジェロ氏が前理事会から残留した。この初期理事会はOpenAIのガバナンスを再構築し、新たに9人から成る新理事会を組織すると報じられている。

今後解任騒動の経緯の調査が行われるため、アルトマン氏は新理事会から外された。Microsoftから理事が選出される可能性も指摘されているが、注目点はまだ明かされていない前理事会がアルトマン氏の解任に踏み切った理由である。

OpenAIは、「広く利益をもたらす安全なAGI(汎用人工知能)の創造」をミッションに、公益を最優先する非営利組織が営利目的の事業会社を監督する体制になっている。そのOpenAIにおいて、公益優先の立場の理事と、事業の成長を優先するアルトマン氏との意見の相違が解任の背景にあったとの見方が出ている。

米報道によると、OpenAIの理事会は最大の出資者であるMicrosoftにも発表の直前までアルトマン氏の解任を伝えていなかった。社員や重要な関係者にも知らされなかった電撃解任であり、さらに解任後も説明責任を果たしていないことが、理事会に対する強い反発を引き起こした。だが、もしOpenAIのミッションである公益優先のAI開発を脅かす可能性が理由であったのなら、理事会にはCEOを解任する権限が与えられている。また、そうであったのなら、OpenAIだけの問題にとどまらない。米国で進められているAI規制や今後のAI開発にも関わってくる問題になる。

AI開発でリードする米国において、10月末にバイデン大統領が安全なAI開発と利用のための大統領令を発令したが、AI規制はまだ方向性が示された段階に過ぎない。Microsoftは、公益を重んじるOpenAIで開発された技術をパートナーシップを通じて製品に利用することで、安全かつ迅速なAI活用のバランスを保っており、それによってMicrosoftは現在の生成AIブームにおいて強い存在感を示せている。企業による自制が求められる現在のAI開発において、OpenAIは安全で責任あるAI技術の開発と普及において重要な役割を担っている。そのため、解任劇でOpenAIの研究者や社員の大量離脱が起こっていたら、AI開発に対する懸念を強める大きなリスクがあった。