AIにより仕事が変わると言われて久しい。この1年の生成AIブームで実際に使ってみて、変化を身近に感じている人も多いのではないか。AIが本格的に業務に組み込まれる前に、企業は何をすべきか?

生成AIで変わる仕事

AIや自動化により仕事が変わると言う予想は、新しいものではない。以前から繰り返しの多い作業はいつかなくなると言われてきた。

しかし、この1年の生成AIブームは、これまで影響を受けない領域と言われていた知的労働ですら、安泰ではないことを示した。これから仕事が急激に変わると言う予兆を、身を持って体感した人も少なくないのではないか。

IBMの調査によると、企業の経営層は今後3年間でAIや自動化を実装することで、40%の社員にリスキルが必要になると回答しているそうだ。生成AIはすべてのレベルの仕事に影響を与えるが、70%がエントリーレベルのポジションはすでにその影響が出始めていると回答していると言う。

このような変化の時代に企業は何をすべきか。人事向け情報サイトのHROTodayが「40% of Workforce Will Need to Reskill in Response to AI」として、対策を紹介している。

企業が取るべき3つの対策

(1)仕事そのものを見直す、(2)人材と技術の両方に投資する、(3)従業員エンゲージメントの強化の3つを提案している。

仕事そのものを見直す

(1)は、生成AIにより仕事をなくすのではなく、仕事そのものを見直すと言う作業だ。それまで当たり前のように設けてきたそのポストが本当に必要なのか?部分的であれ、自動化できるとすれば、他の仕事と組み合わせて新しい仕事にできないか?などの視点で考えると良いかもしれない。

実際、87%がAIが仕事に置き換わるよりも、いくつかの仕事が統合されると予想していると言う。まずは、AIなどの技術を適用することで、どの部分の作業を人がやらなくて済むようになるのかを特定する。

そして、これまでの1人がやっていた仕事に対し、複数の仕事を組み合わせるとどうなるのかを見る。このようにして、個人の仕事や課の役割を根本から見直して再編していくと良いと言う。

人材と技術に投資する

(2)はAIの導入など技術への投資に合わせて、人への投資も行うべきと言うアドバイスだ。新しいスキルを身につけるリスキリングが重要と言われるが、具体的にその人が身につけるべきスキルは何か?あるいは、その人がまったく新しいスキルを身に付けたいなら、それをどのように支援するのか。

リスキルにあたっては、従業員1人1人、現在の仕事とスキル・知識は異なる。得意・不得意や関心分野も違うため、人事のサポートは重要だ。逆に、既存の知識やスキルをさらに向上する方が良い場合もあるだろう。

エンゲージメントの強化

(3)の従業員エンゲージメントは、AIだから重要なテーマではない。技術トレンドに関係なく企業が重視すべきことだ。

しかし、すでに不安を抱えている従業員に対して、企業は個人の仕事と組織を変更してもらわなければならない。そこでは、従業員がどれだけ自社のビジョンや方向性に共感しているか、自分の仕事に誇りを持っているか、幹部をはじめ社員と良好な関係を構築できているかなどのエンゲージメントは重要になる。

AIを導入する際には、自分の仕事を置き換えるのではなく、自分の仕事を楽にしてくれる、効率化してくれるツールとして導入したい。従業員エンゲージメントが高ければ、2)の人と技術の投資が最大限の効果をもたらすはずだ。