シャープは10月27日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「移動体用太陽電池の研究開発プロジェクト」において、化合物2接合型太陽電池モジュールとシリコン太陽電池モジュールを組み合わせた積層型太陽電池モジュールで、変換効率33.66%を達成したことを発表した。
エネルギー需要の大部分を化石燃料に依存している運輸業界では、CO2排出量削減や大気汚染対策の取り組みの1つとして電気自動車(EV)を導入する動きが加速しており、その効果を最大限に引き出すため、再生可能エネルギー(再エネ)からの電力供給が期待されている。
また、EVなどのモビリティに太陽電池を搭載することにより、再エネ由来電力を直接供給でき、燃料費や充電回数の削減などの面でユーザーの利便性向上が期待されるという。
こうした背景からシャープは、広く一般のEVや宇宙・航空分野におけるモビリティに搭載されるための技術開発として、高効率かつ低コストでモビリティに搭載可能な太陽電池モジュールの開発に着手したとする。
なお同社は長らく化合物太陽電池の開発を進めており、2013年4月、化合物3接合型太陽電池セルにおいて小サイズ(面積1.047cm2)で37.9%の変換効率を達成。さらに2022年には、セルを薄いフィルムで挟んだ構造に変更することでセルの平均変換効率向上とセル充填率の改善を図り、軽量・フレキシブルな実用サイズのモジュール(面積965cm2)で変換効率32.65%を達成している。
シャープによると、従来はモジュールのベースとなるセルについて、インジウム・ガリウム・ヒ素をボトム層とする3つの光吸収層を積み上げる化合物3接合型太陽電池セルを採用していたという。一方で今回試作したモジュールでは、インジウム・ガリウム・リンおよびガリウム・ヒ素の化合物2接合型セルをトップ層に、シリコン太陽電池セルをボトム層に配置した新構造に変更したとのこと。またトップ層の化合物2接合型セルには、薄層でも高効率化できるうえボトム層への光透過率を向上させる工夫を施すことで、さまざまな波長の光を効率的にエネルギー変換することが可能になったとする。
これらの変更により、今回試作された太陽電池モジュールでは変換効率33.66%を達成。加えて、化合物2接合型セルの厚さは、従来の化合物3接合型セルから3分の1以下まで薄層化できることから、材料コストの低減も期待されるとしている。
シャープによると、今回試作された積層型太陽電池モジュールは、11月10日~12日に東京ビッグサイトで開催される技術展示イベント「SHARP Tech-Day」にて一般公開されるとのこと。同社は今後も、EVや宇宙・航空分野などのモビリティへの搭載を目指し、引き続き太陽電池モジュールの高効率化および低コスト化に関する研究開発を進めることで、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、モビリティ分野における温室効果ガスの排出量削減に貢献していくとしている。