2025年4月から10月まで大阪の夢洲で開催される2025年日本国際博覧会(以下:大阪・関西万博)。開会まで残り557日となった10月4日、民間パビリオン出展全13社のうち7社による第1回 パビリオン構想発表会と、同イベントテーマ事業プロデューサーの落合陽一氏を招いたトークセッションが開催された。
本稿では、今回発表された現段階でのパビリオン構想について詳しくお伝えする。
自見担当大臣「子供たちが夢を持てる万博に」チケット価格も考慮
会の冒頭、国際博覧会担当大臣の自見はなこ氏が登壇。大阪・関西万博に向けて意気込みを述べた。
「大阪・関西万博はポストコロナにおいて初めて行われる国際博覧会です。世界中の人たち、とりわけ子供たちが、未来社会に夢を持ってもらえるような万博にしたいと考えています」(自見氏)
同万博は、テーマに「いのち輝く未来社会のデザイン」を掲げていることもあり、未来社会を担う子供たちの来場を促したい考えだ。
続いて登壇した2025年日本国際博覧会協会 会長の十倉雅和氏は、11月30日に開始する前売り券販売について「お子さまも来場しやすい価格設定になっている」と話す。満4歳以上11歳以下の小人チケットは、時期によって変動するものの1,000円から購入できるリーズナブルな価格帯だ。
NTTをはじめ、7社が登壇 - 各社パビリオン紹介
発表会では、出展社のうち7社が登壇。それぞれのパビリオンの構想が披露された。
日本電信電話「NTT Pavilion Natural(仮称)」
日本電信電話(以下:NTT)では、同社独自の通信技術「IOWN(Innovative Optical & Wireless Network)」を使ったパビリオンの構想を発表した。
登壇した同社 取締役執行役員 研究開発マーケティング本部 アライアンス部門長 工藤晶子氏は「物理的な距離、心理的な壁を超えた未来の世界をお見せしたい」と、パビリオンの内容を紹介した。具体的な体験ストーリーは引き続き検討中であるものの、大容量かつ高速なIOWNの通信技術を使って、遠くない未来に社会実装を予定している世界観の一部がパビリオンで体験できるという。
また、パビリオンの建築の構想も述べられ、「生きているパビリオン」(工藤氏)として、テントをイメージした建物を建築予定だそうだ。パビリオン内の電力エネルギーについては、再生可能エネルギーを活用することも発表された。
三菱大阪・関西万博総合委員会「未知なる深海から遥かなる宇宙へ、いのちを巡る壮大な旅」
2005年に開催された愛知万博「愛・地球博」に続き、日本国内で開催される万博へは連続出展となった。
同委員会 事務局長代理の小谷野由紀氏から「いのち輝く地球を未来に繋ぐ」との基本コンセプトを発表した三菱。マザーシップをイメージしたパビリオンの外観は、複数の幾何学模様が重なり合い、地上に浮かぶ造形となっている。
総合委員会は31社から構成され、パビリオン内に各社がブースを出展する予定だという。小谷野氏は「来場してくださった全ての方々にとって素晴らしい思い出になるよう努めたい」と意気込んだ。
電気事業連合会「電力館 可能性のタマゴたち」
「タマゴ“たち”」という表現に強い思いを込めたのは、同会 大阪・関西万博推進室室長 岡田康伸氏だ。
同氏は、世界にはさまざまなエネルギーの「タマゴ」、すなわち資源があふれていて、まだ適切な活用方法が見出されていないケースもあると指摘した。その上で、探求すべきたくさんのエネルギーの可能性を、来場者に理解してもらいたいとの思いがパビリオン構想に込められている。
「重要なのは、さまざまなエネルギーの可能性をたくさん探し集めて、柔軟に選択していく姿勢です。そんなエネルギーの可能性のタマゴをたくさん体験して、楽しく理解したくなるようなパビリオンを目指しています」(岡田氏)
一般社団法人日本ガス協会「ガスパビリオン おばけワンダーランド」
お化けワンダーランドのキャラクター「ミッチー」と共に登場したのは、同協会 万博推進委員会事務局プロジェクトリーダー 石野理絵氏だ。同協会では今ある環境や社会が良い姿に“化ける”ことを願い、“化ける”体験や環境づくりを行う。
パビリオンの建物は鏡のような造りになっており、周りの風景や時間帯、見え方によりその姿を変えていく。建築資材は万博終了後も引き続き使えるような加工を施すとのことだ。こうしたパビリオンの道案内を、先述のミッチーが務めるという。
「ミッチーとの楽しい体験を通じて、皆さまと一緒に化ける体験を作りたいです」(石野氏)
パナソニックグループパビリオン「ノモの国」
パナソニックホールディングス 総合プロデューサーの原口雄一郎氏
「協創」をテーマに掲げたパナソニックグループは、社内だけに限らず学生や子供たちともアイデアを巡らせながらパビリオンの構築を進めているという。パナソニックホールディングス 総合プロデューサーの原口雄一郎氏は「子供たち一人一人の思いに寄り添い、実現するためのパートナーになりたい」と意気込んだ。
壇上にはパナソニックとパビリオンの構築を進めている大阪大学の学生も登壇し「最新の技術やイノベーションに直接触れて、日々の興味や学びをさらに深めたい」と意欲を語った。
住友EXPO2025推進委員会「UNKNOWN FOREST 誰も知らない、いのちの物語」

住友 EXPO2025 推進委員会 事務局長 西條浩史氏
住友館では、同社創業から発展の礎としてきた森林をトピックに挙げる。パビリオンでは、インタラクティブな植林体験を通じて、森林や自然と向き合う構想だ。建物も木造建築で、四国・別子の嶺から着想した山々が連続するシルエットを表現している。建築段階で生まれた端材なども、ベンチやシートなどの素材に流用して無駄を少なくするそうだ。
住友 EXPO2025 推進委員会 事務局長 西條浩史氏は「森林が持つ価値、人間では知ることができなかった学びを体験を通じてお伝えしたい」と語った。
玉山デジタルテック「TECH WORLD」
玉山デジタルテック パビリオン設計ディレクター 小野尭央氏
同社では、大阪・関西万博のテーマに基づき、「心の山」をコンセプトにしたパビリオンの外観を表現する。リサイクル可能な金属素材で造られた群山のモチーフは、昼は太陽光に反射し、夜は星々とともに空を照らすデザインとなっている。
同社 パビリオン設計ディレクター 小野尭央氏はコンセプトをこう説明した。
「高い山々は命の宝庫であり、人類に限らず、生命のシェルターでもあります。皆さんを山の中に案内し、人類と自然が共存する美しさを感じていただきたいです」(小野氏)
パビリオン内は3つの層と吹き抜けのホールで造られるそうで、エレベーターシアターなどデジタル技術を使って、来場者が没入感を感じられるようだ。最上階には720度のVR技術を使って、雄大な山々を眺めることができるそうだ。
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こうした各社の構想は、どのように大阪・関西万博を彩っていくのか。次稿では、落合陽一氏をファシリテーターに迎えたトークセッションの模様を紹介する。