NTT コミュニケーションズ(以下、NTT Com)は10月12日~13日に、ドコモビジネスブランドで展開する法人向けソリューションを展示する「docomo business Forum'23」を、ザ・プリンス パークタワー東京(東京都 港区)で開催した。

今年は展示のコンセプトを「ようこそDXのテーマパークへ」としており、社会と企業のサステナビリティを支えるソリューションが多数展示された。「ビジネスコラボレーション」「従業員エクスペリエンス」「企業プラットフォーム」の3つのテーマの下、ブースが分けられ、展示が行われた。

以下、各ブースにおける注目のソリューションを紹介しよう。

  • docomo business Forum'23会場

    docomo business Forum'23会場

ビジネスコラボレーション

NTTグループが開発を進めるIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)技術には、ドコモビジネスも本気で取り組んでいるようだ。会場の最も目立つ場所に大きなIOWNブースが特設されていたことからも、力の入れようがうかがえる。

IOWNは大容量かつ低遅延な通信を強みとするが、今回のイベントではXR(Extended RealityまたはCross Reality:VRやARなどの技術の総称)を使って遠隔地の人と卓球をする様子が披露された。その距離は実に40キロメートルだ。

これは、NTTが今春発表したAPN(All-Photonics Network)を用いて、遠く離れた相手とも遅延なくラリーを続けられる仕組みである。遠隔地にいる対戦相手の映像は400ギガビット / 秒の帯域を利用して、4K映像で届く。

  • XR卓球のシステム構成

    XR卓球のシステム構成

  • XR卓球をプレーする来場者

    XR卓球をプレーする来場者

ビジネスコラボレーションでもう一つ注目すべきソリューションは、接客やコンタクトセンターでの顧客体験に変化をもたらす、新たなコミュニケーションAIだ。LLM(Large Language Models:大規模言語モデル)の上に同社の音声基盤と感情分析技術などを組み合わせることで、一人一人に合わせた接客対応を可能としている。

アバターの回答生成はパブリックなLLMを用いているため、返答に少し時間を要するという改善点は否めない。とはいえ、顧客の話す速度に合わせてアバターの話速が変化し、双方のペースを合わせながら接客してくれる。

既存のチャットボットでは対応が難しい新商品の説明についても、報道発表リリース文を読み込ませるといった短時間の作業のみで対応できるようになる。これまでのようにシナリオ調整が必要なチャットボットと比較して、迅速に最適化されたAIアバターを使い始めることができるという。

  • 相手のペースに合わせた対話を出力する

    相手のペースに合わせた対話を出力する

また、以前小誌で取り上げた空のドローンと海のドローン、およびコミュニケーション基盤のSkyWayも、ビジネスのコラボレーションを加速するソリューションとして多くの来客でにぎわっていた。

  • 海のドローンが展示された

    海のドローンが展示された

従業員エクスペリエンス

従業員向けには、組織のストレス状態を可視化して健康経営を支援するソリューションが展示された。これは、スマートウォッチのようなリストバンド型デバイスを使ってバイタルデータを計測し、従業員の状態をデータ化するものだ。

  • 指輪型のデバイスにも対応するという

    指輪型のデバイスにも対応するという

その他、人的資本経営を支援するソリューションは「BoostPark」だ。社員が目指す姿や職業を表す「ジョブ」を示せるだけでなく、社内のロールモデルや同じ意思を持つ人の情報も提供することで、社員のキャリア形成を支援する。

ドコモグループが手掛けるeラーニング事業「ドコモgacco」と連携した学習コンテンツも提供することで、社員の主体的な学習と成長も促す。

  • BoostParkの概要と画面例

    BoostParkの概要と画面例

企業プラットフォーム

企業プラットフォームには、1枚のSIMで複数のキャリアを利用可能なIoT(Internet of Things)機器向けのデータ通信用SIM「Active Multi-access SIM」などが展示されていた。

同サービスはベルトコンベアの遠隔監視や稼働率の可視化を支援するもので、通信障害に備えて冗長化されたネットワークを提供する。通常時はドコモの回線を利用するが、障害発生時には自動でサブとなるKDDIの回線に切り替えて通信を継続する。回線を切り替えるまでのリードタイムは数十秒から数分程度だ。

なお、同社ではさまざまオプションを含め、冗長化やVPN(Virtual Private Network)など、要望に応じた構成を提供するとしている。工場などの遠隔監視を支援し、エネルギー効率の向上と資源節約を追求するとのことだ。また、リアルタイムなデータの活用によって、無駄を削減し二酸化炭素の排出量削減にも寄与する。

  • ドコモビジネスのIoTソリューション

    ドコモビジネスのIoTソリューション

  • 「Active Multi-access SIM」の概要

    「Active Multi-access SIM」の概要

同じエリアには、除雪車など大型車両の遠隔操作を支援するソリューションも展示されていた。除雪作業は重労働な上、作業が長時間に及ぶなど作業者の負担が大きく、後継者不足が顕在化している。夜間に寒冷地での労働が求められ、さらに豪雪地帯では少子高齢化の影響も受けやすいため、課題は深刻だ。

これに対しNTT Comは、GNSS(Global Navigation Satellite System:衛星測位システム)やIoT(Internet of Things:モノのインターネット)を活用して、除雪車の遠隔操作を実現し作業負担の軽減を図る。

同ソリューションは既存の除雪車に対して外付けで機器を取り付けるだけで、遠隔操作を可能とする。また、シミュレーターを使って作業のイメージを事前に学べるため、除雪作業へのハードルを低減して人材育成を支援するとのことだ。