日本電信電話(以下、NTT)は10月17日、三菱重工業(以下、三菱重工)と共に特許専用のAI(Artificial Intelligence:人工知能)翻訳の業務活用に関する共同実証を実施し、外国特許出願に要する稼働を削減できる可能性を確認したことを報告した。

両社は2014年に、社会インフラとICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)に関する研究開発連携について基本契約を締結。NTTの研究所が持つICTの研究開発成果を三菱重工のエネルギー・環境、交通・輸送などの社会インフラ関連製品や関連業務に適用し、新たな価値創造を目指す取り組みを実施してしている。その一環で、AIを用いた特許翻訳に向けた共同プロジェクトを2023年2月に開始した。

今回の実証では、AI翻訳の外国特許出願時の翻訳業務への活用の可能性を探るため、三菱重工の特許明細書を対象にNTTのAI自動翻訳エンジンを用いた効果を評価した。特許専用翻訳と汎用翻訳、および既存の特許専用翻訳の3種類のAI自動翻訳エンジンによる翻訳結果について、両社の知的財産部門で特許出願業務に従事する社員によって翻訳品質の順位付けが行われた。

なお、実証においては三菱重工は知財部門による実業務の日英の特許明細書(請求項含む)の評価用データを提供し、翻訳結果を評価している。一方のNTTは同社の研究所が持つ独自技術により作成した、特許表現から構成される3億超の日英特許対訳文コーパスを提供した。また、同社の知財部門も翻訳結果の評価を実施している。

その結果、特許専用翻訳、汎用翻訳、既存特許専用翻訳の平均順位はそれぞれ1.5位、2.0位、1.9位であり、今回開発した特許専門翻訳が最も高い順位を獲得したという。さらに、プロの翻訳家によって事前に作成された正解翻訳との類似性を用いた自動評価(100点満点)について、汎用翻訳は38.6点、既存特許専門翻訳では44.0点であったのに対し、特許専門翻訳は57.5点を記録している。

両社はこれらの結果を受けて、特許専用AI自動翻訳(エンジン)の活用により外国特許出願時の翻訳に要する工数を削減できる可能性があるとしている。この実験成果を活用した特許専用のAI自動翻訳については、NTTグループ企業であるみらい翻訳からのサービス提供を予定している。