NTT コミュニケーションズ(以下、NTT Com)はこのほど、ドコモグループの法人向けサービスであるドコモビジネスブランドが手掛ける「コミュニケーションAI」について、その取り組み例と今後の展望を報道陣に語る機会を設けた。

NTTグループ全体の中期経営戦略では、AIやロボットを活用した社会・産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に対し、今後5年間で3兆円以上を投資する方針が示されている。NTT ComはNTTグループが強みとする音声を軸としたコミュニケーションAI「COTOHA」などを展開しているが、生成AIをはじめ新たな技術が台頭する中で、今後は何を見せてくれるのだろうか。

  • NTTグループはデジタルビジネスなどに5年で3兆円以上の投資を実施する

    NTTグループはデジタルビジネスなどに5年で3兆円以上の投資を実施する

NTT Comの今後の方針を語ったのは、代表取締役副社長を務める菅原英宗氏。同氏によると、生成AIをプラットフォームからAIモデル、アプリケーションまでトータルで支援するビジネスを加速するという。

  • NTT Com 代表取締役副社長 副社長執行役員 菅原英宗氏

    NTT Com 代表取締役副社長 副社長執行役員 菅原英宗氏

具体的には、先ごろ発表した低消費電力を特徴とするデータセンター「Green Nexcenter」などの基盤に加えて、NTTグループが開発を進めるIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)技術や、NTT版LLM(Large Language Models:大規模言語モデル)、付加価値のある生成AIなど、さまざまなレイヤーでサービスを展開する。

NTT版のLLMとは、専門性に特化した小規模な複数の言語モデルをつなぎ、結果的に高効率なLLMを実現しようという試みだ。単一の巨大なAIよりも、集合知的な高い性能が期待できるという。個別のモデルをIOWNで連携させることで低遅延で効率的な運用も見込める。

  • ドコモビジネスの生成AIに対する取り組み

    ドコモビジネスの生成AIに対する取り組み

モデルとアプリケーションをつなぐレイヤーでは、生成AIに独自の付加価値を追加して展開する。利便性の向上だけでなく、セキュリティや信頼性・安全性の向上にも寄与する。さらに、Open AIのGPTモデルや、上述のNTT版LLM、PaLM(Google)、LLaMA(Meta)、Bedrock(Amazon)など複数のLLMを選びながら使える連携機能なども提供する予定だ。

  • ドコモビジネスが展開するAIの付加価値機能

    ドコモビジネスが展開するAIの付加価値機能

アプリケーションとしては、以前から同社が提供してきたCOTOHAに生成AIの機能を付加した「新コミュニケーションAI」としてサービスを刷新する。COTOHAとは、対話や翻訳、音声認識、要約などの機能を持つAIだ。これを生成AIと組み合わせることで、専門性を拡張しながら勘定認識やパーソナライズに対応できるようになり、コンタクトセンター業務などを代替、または補完、さらには超越できる機能を目指す。

新コミュニケーションAIでは、ドコモグループが持つデジタルヒューマン技術や音声・対話技術などを組み合わせて、新たな顧客体験の創出を狙う。また、同社のオペレーターの対応ログを活用した、次世代型のコンタクトセンターも期待できるそうだ。

  • 新コミュニケーションAIの概要

    新コミュニケーションAIの概要

菅原氏は今後の展開について、「まずは先行してお客様やパートナー企業との共創をベースとしたソリューションを提供していく。付加価値機能は今年12月くらいにはリリースし、来年には新コミュニケーションAIもリリースできるだろう」と語っていた。