江戸川区の児童相談所である「はあとポート」は、NTTテクノクロスのコールセンター向けAIソリューション「ForeSight Voice Mining(フォーサイト ボイス マイニング、以下、電話応対支援システム)を導入し、2022年1月より、相談員の業務支援に利用している。

以下、「はあとポート」の電話応対の業務効率化の取り組みについて、紹介する。

  • 江戸川区の児童相談所「はあとポート」

    江戸川区の児童相談所「はあとポート」

1日数百件の受電、電話対応の効率化が課題

「はあとポート」は、東京23区立の児童相談所としては初めて、令和2年の4月に開設した。相談の9割は電話によるもので、365日24時間受け付ける。

相談の内容は、近所の人がマンションで泣き声がして心配、学校の先生からの生徒が親から殴られてアザを作って登校してきたといった虐待の通告もあれば、保護者が子育てに疲れたと涙ながらに相談してくるケースもある。そのほか、不登校や非行の相談もあるという。

年間相談数は3,500件ほどで、ほかにも継続中の案件もあり、1日数百件の電話が掛かってくる。そのため、同施設では電話相談業務の効率化に取り組む必要性に迫られていた。

「はあとポート」 援助課 援助調整係 係長 横山智哉氏

「はあとポート」 援助課 援助調整係 係長 横山智哉氏

「はあとポート」 援助課 援助調整係 係長 横山智哉氏は、電話応対支援システム導入の背景を、次のように説明した。

「児童相談所の職員は、すべての電話や面接を経過記録として残しています。日中に電話や面接、家庭訪問などに対応すると、夜に残業して記録を書くことになります。また、職員間で経験年数の差も大きく、この施設は若い職員が多いので、ノウハウを蓄積できていません。そのため、効率的、かつ平均的に事務ができるよう、DXを通じて改善できないかと考えていました」(横山氏)

通話内容をデジタル録音すると同時に、リアルタイムでテキスト化

電話応対支援システムでは、通話内容をデジタル録音すると同時に、リアルタイムでテキスト化して画面上に表示する。テキストは話者ごとに色分けされ、出てきたキーワードにより、回答の参考になる情報の候補を表示する機能も備えている。

導入したシステムは、業務で利用する単語を辞書登録した以外、カスタマイズは行っていないという。

  • 電話応対支援システムの画面。青色の部分が相談者、黄色の部分が職員という具合に、話者が分離して表示される

    電話応対支援システムの画面。青色の部分が相談者、黄色の部分が職員という具合に、話者が分離して表示される

NTTテクノクロス カスタマーエクスペリエンス事業部 ビジネスフロント部門 リーダー 青木大氏

NTTテクノクロス カスタマーエクスペリエンス事業部 ビジネスフロント部門 リーダー 青木大氏

「特定のキーワードが出たら、それに関連するものを候補として提示しています。それを参考に対応していただくというよりは、回答の候補を提供するイメージになります。Google検索のように概要を登録できるので、それを見て、関連する資料を開くこともできます。ピンポイントで調べたいときには、AND条件で細かく設定して回答の候補を表示し、そこから職員の方に選んでいただくようになっています」

こう語るのは、システムを導入したNTTテクノクロス カスタマーエクスペリエンス事業部 ビジネスフロント部門 リーダー 青木大氏だ。

表示する資料はMicrosoft Word、Excel、PowerPoint、PDFに対応。これまでの資料をPDF化すれば、ブラウザ上で閲覧できる。

「役所には、子育て支援制度がたくさんあり、市町村によっても違います。職員の人は異動が多いので、異動したての時は、すぐに制度を説明できないこともあります。このシステムでは、電話の内容から自動的にマニュアルの候補が出ますので、どんな職員が受けても同じサービスを提供できます」と、横山氏はメリットを語る。