今、企業のリーダー層は、不確実性の高い新時代の舵取りを迫られている。先行きが不透明で常に変化と向き合いながら次の一手へと歩みを進める時、そのよりどころとなるのは企業が思い描く「ありたい姿」「志」だ。そして、今いる現在地とありたい姿の間にあるギャップを埋めるために、デジタルの活用は不可欠となる。

8月2日~18日に開催された「ビジネス・フォーラム事務局×TECH+ EXPO 2023 for Leader DX FRONTLINE ビジョンから逆算する経営戦略」では、変革に取り組む先進企業のリーダーや専門家を招き、経営とデジタルのかかわり方について、創造と変革に挑むリーダー層を対象に講演が行われた。

以下では、基調講演および編集部セッションのレポートへのリンクをまとめている。先進事例を通じて、経営戦略を考察するヒントにしていただきたい。

DAY1:基調講演

A-1:パーパスを基軸とした次世代イノベーション(10X)の実践

  登壇者:一橋大学ビジネススクール 客員教授 京都先端科学大学 教授 名和高司氏
パーパス経営が、時代の新潮流となっている。しかし本質的な課題は、そのパーパスに向けていかに非連続な成長(10X)を実践するかにある。本講演では、パーパス経営実践のカギを握る次世代イノベーション(10X)の運動論と組織論をご紹介する。

編集部セッション

A-3:40年前から始まっていた「ぴあ」のDX〜その「変態」の全容と、見据える未来〜

  登壇者:ぴあ株式会社 取締役 社長室長/広報・IR担当役員 兼 ぴあ総研 取締役論説委員 小林覚氏
1984年4月、出版社でありながら、日本初のオンラインチケット販売サービスをスタートさせた「ぴあ」。2000年代にはネット販売に一気にシフトし、2020年になると音楽専用の「ぴあアリーナMM」(1万人収容)を横浜に開業。創業から50年、背骨となる理念やドメインを変えることなく「変態」を続け、常にビジネスの開拓を進めています。本講演では、「ぴあ」創刊時から当社を支えてきた企業文化やCI、新規事業に対する考え方に加え、「感動消費時代」の集客エンタメ産業の将来性などについてご紹介いたします。

A-6:デジタルが外食産業にもたらす変革と可能性

  登壇者:ロイヤルホールディングス株式会社 代表取締役会長 菊地唯夫氏
長きに渡ったコロナ禍は、外食産業のデジタル化を大きく進めました。デジタル化が外食産業を初めとする人が直接的に価値創造を行う産業においてどのような変革をもたらすのか、そしてその変革が産業にとって本質的に意味することは何かを考えてみたいと思います。

A-9:「日本航空再建と全員経営」~社員の力を活かす JAL奇跡の再建~

  登壇者:株式会社NTMC 代表取締役社長 森田直行氏
2010 年 稲盛和夫京セラ名誉会⾧とともに経営破綻したJAL グループの再建に参画し2年で改革を成し遂げた。その軌跡の経営手法「部門別採算」という管理会計の仕組みを当時のエピソードを踏まえお話しいたします。

DAY2:基調講演

B-1/B-9:現場起点の経営改革~ファストリ副社長、ファミマ社長を歴任!澤田貴司が絶対にぶらさない"経営の軸"~

  登壇者:株式会社ロッテベンチャーズ・ジャパン 代表取締役会長 澤田貴司氏
ファーストリテイリング副社長をはじめとして他企業の社外取締役を務めた経験も持ち、さらには自身で起業もするなど、多種多様な世界で経営に携わってきた澤田氏。ファミリーマートの社長就任時には社長研修を自ら受け、 店舗スタッフとの交流も図るなど、徹底的な「現場主義」で組織を率いてきました。 数々の功績を残している同氏ですが、当然ながら、その裏側では難しい決断も。 果たして澤田氏はビジネスのセンターピンをどこに置き、苦難に直面した時、どのようなマインドセットで決断を下してきたのでしょうか。 ご自身の経験談を交えてお話しいただきます。

編集部セッション

B-3:情報システム部発!最新デジタル技術活用に向けた取り組み

  登壇者:コクヨ株式会社 情報システム部 東京ビジネスシステムユニット ユニット長 吉城基裕氏
情報システム部門は、既存システムの運用・保守に手一杯で、最新デジタル技術をどこか遠くに感じているところがあります。コクヨの情報システム部では、まず「自分たちで楽しんで実験・体験」し、そこから「事業や業務に活かす」ことにチャレンジしています。今回はその取組の詳細をご紹介します。

B-6:楽しく仕事するために~昭和創業の町工場がFAを実現し、外販に至るまで~

  登壇者:株式会社土屋合成 代表取締役社長 土屋直人氏
経済産業省が中堅・中⼩企業等のモデルケースとなるようなDX 優良事例を選定する「DXセレクション」。2023年度の準グランプリに輝いたのが、プラスチック加工メーカーの株式会社土屋合成です。IoTやAIを駆使して24時間稼働システムを構築。単純作業を極⼒⾃動化することで、社員の苦行を減らし、品質向上も実現しています。さらには、そのノウハウを活かし、ものづくりのコンサルティング企業を設立。同業他社の課題を解消する取り組みも始めています。いかにしてDXの道を歩み始めたのか。経営者としての考え方や、乗り越えてきた苦難などをお話いたします。

レポート掲載はありません

DAY3:基調講演

C-1:ピンチはチャンス!~山口の山奥の小さな酒蔵だからこそできたもの~

  登壇者:旭酒造株式会社 会長 桜井博志氏
山口の山奥の小さな酒蔵である旭酒造。日本酒「獺祭(だっさい)」が純米大吟醸の販売量で日本一となり、アメリカやヨーロッパなど、世界30の国と地域への輸出拡大を果たした体験、逆境をチャンスに変えて成功した体験談。

編集部セッション

C-3:東急不動産HDグループDXによる新価値創造の取り組み

  登壇者:東急不動産ホールディングス株式会社 グループDX推進部 統括部長 青木貴弘氏
東急不動産HDは、デジタル時代の価値創造・いきいきと輝ける未来づくりをビジョンに掲げ、デジタルフュージョンに取り組んでいます。本講演では、効率化の先にある顧客体験の向上やイノベーションによる事業変革、都市OSといったまちづくりDXを通して実現する価値創造の取り組み事例、人財獲得・育成についてお話しします。

C-6:企業を持続的成長に導くDX「8つの鍵」-DX調査2022から分かった現在地とこれから-

  登壇者:株式会社電通デジタル 執行役員 安田 裕美子 氏
電通デジタルは、国内最大規模の総合デジタルファームとして、2017年から「日本における企業のデジタルトランスフォーメーション調査」を業界に先駆けて実施しています。本講演では、その最新結果(2022年度)に加えて、6年にわたる調査から浮かび上がってきた「DX成果創出と持続的成長に向けた8つのKSF」とそれを実践するためのDX最新アプローチについてご紹介します。

C-9:ユーザーファーストを目指す野村證券が取り組むDX推進

  登壇者:野村ホールディングス株式会社 執行役員 デジタル・カンパニー長兼営業部門マーケティング担当 野村證券 常務 池田肇氏
受け継がれる野村證券の「顧客第一の精神」は創業からまもなく100年。 その理念を様々なかたちで再現し続けています。 投資へ心理的ハードルを下げながらも身近に感じてもらうための資産運用アプリのリリースやOMOの推進など、 顧客に寄り添ったデジタル活用を積極的に行っています。 アフターコロナに差し掛かっているいま、どのようにデジタルとリアルを活用し、また、どのようなビジョンを持って顧客に寄り添っていくのか。 グループのデジタル関連のリソースを集約し重点領域を明確化しスピードアップして変革に取組んでいる「デジタルカンパニー」のトップ池田肇氏にTECH+編集長の星原が伺います。

DAY4:基調講演

D-1:【超クリエイティブ 事業成長に効くクリエイティブとは】

  登壇者:The Breakthrough Company GO 代表取締役 PR/CreativeDirector 三浦崇宏氏
設立6年でファミリーマート、KOSE、JINSなど国内の名だたる企業のマーケティング・ブランディングをサポートしてきた『事業クリエイティブ』の専門集団The Breakthrough Company GO。代表の三浦が、SDGs・AI・DXなど著しく変化し続けるビジネス環境において、成長し続ける原動力としての『クリエイティブ』について語ります。

編集部セッション

D-3:今日のあたり前を支え、明日のあたり前をリードする「ENEOSデジタル戦略」

  登壇者:ENEOSホールディングス株式会社 ENEOS株式会社 取締役 副社長執行役員 CDO 椎名秀樹氏
事業環境の転換期にある当社は、抜本的な業務改善や新たなビジネスモデル創出に社を挙げて取り組んでいます。新たな中期経営計画の起点となる 2023年度は、経営基盤を強化すべく、デジタル技術の活用を重要施策と位置づけ、「ENEOSデジタル戦略」を策定しました。本講演では、これまでの取り組みとデジタル戦略の概要についてご紹介します。

D-6:Audibleが提供する新しい時間 - デジタルトランスフォーメーション

  登壇者:Amazon Japan G.K. Audible カントリーマネージャー 逢阪志麻氏
創設当時からデジタルでコンテンツを提供してきた Audible の歴史と変革について、お伝えします。

D-9:出口戦略を用いたイノベーション型新規事業の大型化

  登壇者:パナソニック ホールディングス株式会社 名誉技監 ESL 研究所 所長 京都大学 特命教授 大嶋光昭氏
“2 段階の出口戦略”により破壊型イノベーション型の技術開発テーマをスケールさせ、年商数千億円規模の大型事業立ち上げに成功。これを複数回実施し、関連事業の累計営業利益は 3000 億円、年商換算で 6 兆円にも及ぶ。日本において今後 20年間は成熟企業におけるイノベーションが主流になると考えており、その際に重要な“出口戦略”について述べる。