日本の大手自動車メーカーが中国で苦戦を強いられるなか、三菱自動車が中国での自動車生産から撤退すると一部メディアが9月下旬に報じた。

中国国内では電気自動車(EV)が急速に普及し、中国メーカーの存在感が飛躍的に増している中、三菱自動車は現地合弁会社の広汽三菱汽車と、湖南省にある工場でガソリン車を中心に生産してきたが、同社の中国での販売台数はコロナ禍前の2018年には約14万台だったものが、昨年は3万台あまりに落ち込むなど苦境が続いている。三菱自動車は今後、東南アジアへのシフトをいっそう強化するとみられる。

こういった大手自動車メーカーの脱中国の動きは同社以外にも見られる。たとえば、ホンダは昨年8月、国際的な部品のサプライチェーンを再編し、製造から完成までのプロセスで中国とその他地域を完全に切り離していく方針を明らかにした。これは、中国リスクは重々承知であるが、総売上に占める中国依存を考慮すればすぐには脱中国が難しく、何とかバランスを取ろうというホンダの選択肢だろう。また、マツダも新車の製造で使用する部品の中国依存度を下げていく方針を明らかにした。

こういった大手自動車メーカーの中国依存度を減らし、東南アジアなどへシフトする動きは今後いっそう拡大することになる。今回の三菱自動車に関する報道は、中国市場での苦戦に伴うものだろうが、今後は地政学的リスクの高まりから、中国市場は日本企業にとってさらに難しい相手となる。

たとえば、中国では7月からスパイ行為の定義が大幅に拡大された改正反スパイ法が施行されたが、中国政府は国内での外国企業、外国人への監視の目を強化しており、企業によって派遣される駐在員の安全に懸念が強まっている。幸いにも7月以降、中国で日本人が拘束されたとの報道は明らかになっていないが、中国では断続的に日本人がスパイ容疑で逮捕、実刑判決を受けており、今後さらにそれに拍車が掛かる恐れがある。

また、先端半導体をめぐって、日中間でも貿易摩擦が拡大している。日本は7月、先端半導体向け製造装置など23品目について中国への輸出規制を開始した。中国はそれに強く反発し、同時期に半導体の材料となる希少金属ガリウムとゲルマニウムの輸出規制を開始した。また、福島第一原発の処理水放出に対し、中国は日本産水産物を全面的に輸入禁止にしたが、これも先端半導体分野での日本への不満の表れである。

こういったリスクは、米中対立の激化とともにいっそう高まることになる。キヤノンの御手洗冨士夫会長兼社長は昨年、海外の生産拠点で地政学リスクが高まっているとして、工場の展開など時代に見合った体制に見直すべきとして主要な工場を日本に回帰させる考えを示した。また、中国や台湾情勢に言及し、企業の純粋な経済活動が影響を受ける国々に生産拠点を放置することはできず、安全な第3国への移転か日本に戻すという2つの選択肢しかないという認識を示した。

こうした一連の動きは、今後のチャイナリスクを考えれば氷山の一角に過ぎない。今後さらに難しい情勢となれば、中国からの完全撤退を進める日本企業が一気に増えることになるだろう。

2023年10月4日訂正:記事初出時、三菱自動車が中国市場から撤退と記載しておりましたが、同社から公式発表されたものではないため、事実と異なっておりましたことから当該部分を訂正させていただきました。ご迷惑をお掛けした読者の皆様、ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。