東京都市大学(都市大)と東急建設の両者は9月26日、ドローンが上壁(橋桁や天井などの構造物)近傍での飛行時に制御不能となることを予防し、安定化させる新技術を開発したことを共同で発表した。
同成果は、都市大 理工学部 機械工学科の西部光一准教授、東急建設 技術研究所の共同研究チームによるもの。詳細は、米国機械学会が刊行する流体力学に関する全般を扱う学術誌「Journal of Fluids Engineering」に掲載された。
近年、構成部品の小型軽量化や制御精度・バッテリー寿命の向上に伴い、ドローンの応用範囲が急速に拡大している。建設中のビルや建設後の橋梁の監視などへのドローンの利用は、政府としても利用を検討中だ。実際に、国土交通省が推進する建設現場の生産性向上を目的としたプロジェクト「i-Construction(アイ・コンストラクション)」の検討項目である「ICTの全面的な活用」の1つとして検討がなされており、一部ではすでに実用化が始まっている。
ドローンは熟達したオペレーターが操縦するととても安定した飛行を見せるが、熟達したオペレーターであっても、突如機体がバランスを崩してしまうような空間がある。それは橋桁や天井など、上方に構造物があるような空間で、こうした上壁の近傍を飛行する際には推力が急増してしまい、バランスを崩してしまう危険性があるのだ。その結果、構造物に衝突して損傷したり、最悪の場合は墜落してしまったりする恐れがあり、屋内の建設現場での実用化に向けた課題となっているという。この急激な推力上昇を抑制するための技術の開発が強く望まれていたことから、研究チームは今回、まずドローンが上壁近傍を飛行する際に推力が急増するメカニズムの解明を試みることにしたとする。
その結果、回転翼と上壁間に生成される旋回流によって両者間の気圧が減少すること、ドローン近傍の流れが反転することが推力を急増させる一因であることが実験的に解明された。また、この気圧および気流の変化を抑制することによる推力の増大を抑える方法として、回転翼の軸(ハブ)部分を貫通する圧力回復孔を設けた回転翼が開発され、この貫通孔を通じて減圧量を抑えることによって、上壁近傍飛行時の急激な推力上昇の抑制が試みられた。
従来のドローンの回転翼と、上壁の距離が回転翼直径Dの10分の1(g/D=0.1)付近で推力が急増するのに対し、今回開発された回転翼の場合はその上昇度が小さくなり、その推力上昇率(上壁最接近時と上壁から十分離れた場合の推力比)は、従来回転翼に対して約20%の抑制が可能であることが実験的に確認された。これにより、上壁近傍における飛行制御性・安全性の向上が期待されるとしている。
今回の研究で開発された回転翼は比較的単純な構造のため制作性も高く、既存のドローンへの適用が容易なことから速やかな実用化が可能だという。屋内環境下や構造物に近接して行う点検や軽作業へのドローン活用促進に寄与することが考えられるとした。また、今回開発された回転翼の軸(ハブ)部分を貫通する圧力回復孔は、幅広いサイズや形状の回転翼および運転条件に対応可能であることから、小型ドローンのみならずさまざまな大きさのドローンへの応用も期待されるとしている。