ラクス、ビズリーチ、弁護士ドットコムの3社が主催する「紙に縛られない働き方」プロジェクトは9月20日、日本企業の「紙業務」の課題解決に向けた共同セミナーを開催した。

同セミナーでは、バックオフィスに根強く存在する「紙業務」の課題について、企業がどのようにペーパーレスを促進させたかなどの事例や導入のポイント、柔軟な働き方や生 産性向上を実現させるための企業の取り組みが紹介された。

セミナーには、ラクスの楽楽クラウド事業本部 マーケティング統括部 クロスメディアマーケティング部 部長の石井久博氏、同事業部の楽楽精算事業統括部 営業統括部 東日本広域営業部 部長の名和吉昭氏、ビズリーチのHERMOS事業部 IEYASU推進室長でIEYASU 代表取締役の川島寛貴氏、弁護士ドットコムのクラウドサイン事業本部 事業戦略部 プロダクトマーケティンググループ グループマネージャーの安藤陽介氏が登壇した。

本稿では、その一部始終を紹介する。

  • ,紙に縛られない働き方プロジェクトのロゴ

    紙に縛られない働き方プロジェクトのロゴ

誰一人取り残さないペーパーレス化を実現する「紙に縛られない働き方プロジェクト」

初めに登壇した石井久博氏は、今回のセミナーを主催する「紙に縛られない働き方」プロジェクトの発足の目的を紹介した。

「紙に縛られない働き方プロジェクトは、業務のデジタル化によるペーパーレスの啓発・支援により『紙に縛られない働き方』と『生産性向上』の実現を目指す共同プロジェクトです」(石井氏)

  • ,紙に縛られない働き方プロジェクトの概要を話すラクスの楽楽クラウド事業本部 マーケティング統括部 クロスメディアマーケティング部 部長の石井久博氏

    紙に縛られない働き方プロジェクトの概要を話すラクスの楽楽クラウド事業本部 マーケティング統括部 クロスメディアマーケティング部 部長の石井久博氏

石井氏曰く、業務のデジタル化により「柔軟な働き方の選択肢」「生産性向上」を実現する上で、紙書類の存在が業務改善の大きなネックとなっているという。

実際に、2023年2月に紙に縛られない働き方プロジェクトが実施した調査では、「業務のデジタル化を進める上でハードルとなりそうなもの(なったもの)」として「紙書類・ハンコの商習慣」が34.4%で、最上位に挙がる結果となった。

そこで、共通の志を持つ企業で協力し「誰一人取り残さないペーパーレス化」を実現するために設立されたのが、紙に縛られない働き方プロジェクトだ。

「本プロジェクトは、ラクスが発起人となり、人材活用プラットフォームであるハーモスシリーズなどを提供するビズリーチ、電子契約サービスであるCLOUDSIGNなどを提供する弁護士ドットコムの3社で立ち上げ、2022年1月から始動するに至りました。現在では、3社に加えて賛同企業の43社と共に活動を行っています」(石井氏)

  • ,2023年8月時点の「紙に縛られない働き方」プロジェクト賛同企業

    2023年8月時点の「紙に縛られない働き方」プロジェクト賛同企業

会社員の半数が紙書類の業務処理に毎月10時間以上

続いて石井氏は、紙に縛られない働き方プロジェクトが今回のセミナーを開催するに至った背景として、紙にまつわる調査の結果を発表した。

「今回の調査結果から、多くの企業がデジタル化が必要な事は理解しているものの、紙書類の文化を変えるのは難しいということを改めて認識させられる結果となりました」(石井氏)

「あなたがお勤めの会社において、ITツールを活用したペーパーレス、生産性向上などを目的に『業務のデジタル化』をした方が良いと思いますか」と聞いた質問では、73.9%の企業が「デジタル化した方が良いと思う」と回答した一方で、実際のデジタル化の進捗を聞いた質問では、58.8%が「デジタル化が進んでいない」と回答する結果となった。

  • ,あなたの部署では、ITツールを活用したペーパーレス、生産性向上などを目的に「業務のデジタル化」が進んでいると思いますか 引用:紙に縛られない働き方プロジェクト調査結果

    あなたの部署では、ITツールを活用したペーパーレス、生産性向上などを目的に「業務のデジタル化」が進んでいると思いますか 引用:紙に縛られない働き方プロジェクト調査結果

その理由としては、前述したように、「業務のデジタル化を進める上でハードルとなりそうなもの(なったもの)」として「紙書類・ハンコの商習慣」が最上位になっていることが挙げられ、会社員の55%が「紙書類の業務処理に1カ月で10時間以上の時間を要している」との結果も出ている。

「デジタル化の有無が柔軟な働き方の実現や生産性の向上にも影響を与えることが分かっています。デジタル化している企業とデジタル化していない企業に分けて、自分の部署の『働き方』と『生産性』について聞いた調査では、どちらの項目でもデジタル化している企業の方が圧倒的に良い影響を与えていることが分かっています」(石井氏)

このような調査を背景として、顕在化する紙課題の解消に向けデジタル化の第一歩を踏み出せるように、紙に縛られない働き方プロジェクトがセミナーを開催するに至ったとのことだ。

バックオフィスのDXに役立つプロダクトの導入事例 3選

続いて登壇した名和氏、川島氏、安藤氏が、バックオフィスのDX(デジタルトランスフォーメーション)に役立つプロダクトと導入事例の紹介を行った。

  • ,左から弁護士ドットコムのクラウドサイン事業本部 事業戦略部 プロダクトマーケティンググループ グループマネージャーの安藤陽介氏、ビズリーチのHERMOS事業部 IEYASU推進室長でIEYASU 代表取締役の川島寛貴氏、ラクスの楽楽クラウド事業本部 楽楽精算事業統括部 営業統括部 東日本広域営業部 部長の名和吉昭氏

    左から弁護士ドットコムのクラウドサイン事業本部 事業戦略部 プロダクトマーケティンググループ グループマネージャーの安藤陽介氏、ビズリーチのHERMOS事業部 IEYASU推進室長でIEYASU 代表取締役の川島寛貴氏、ラクスの楽楽クラウド事業本部 楽楽精算事業統括部 営業統括部 東日本広域営業部 部長の名和吉昭氏

ここで紹介されたのが、経費精算システム「楽楽精算」と勤怠管理システム「ハーモス勤怠」と電子契約システム「クラウドサイン」だ。

楽々精算の導入事例: 経費精算を半日に短縮したペッツファースト

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最初に、「楽楽精算」を導入したペッツファーストの事例が紹介された。同サービスは、交通費、出張旅費、交際費精算など経費にかかわるすべての処理をまとめて効率化できるクラウド型の経費精算システムだ。

「ペッツファーストさまは、楽楽精算を導入する前、紙中心の経費精算業務に丸3日間を要し、効率化が大きな課題となっていました」(名和氏)

ペッツファーストでは経費精算が紙中心になっていたため、入力ミスや回収時の紛失リスクも高く、なおかつ出社しないとできない業務が多く存在しており、生産性の面で大きな課題を抱えていた。

しかし、「楽楽精算」導入により、この「紙」ありきの経費精算の業務フローのデジタル化に成功。例えば、申請者→承認者→経理担当者という承認フローをスマートフォンやパソコンにて作業することが可能となり、経費精算を半日まで削減したほか、今まで考えられなかった経理のテレワークも実現するに至ったという。

ハーモス勤怠の導入事例: ハンコの押印をなくしたケイ・エム・ディ・エス

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続いて、「ハーモス勤怠」を導入した川崎汽船グループのケイ・エム・ディ・エスの事例が紹介された。同サービスは、スマートフォンから出勤・退勤・休憩打刻を行うことができる勤怠管理システム。

ケイ・エム・ディ・エスでは、ハーモス勤怠を導入する前は派遣社員の勤怠データを印刷し、ハンコによる承認、そしてファクス送信した文書を手作業で確認というフローが取られていた。しかし、在宅勤務の人の増加に伴いハンコを押印することが現実的でなくなりつつあったことや、ハンコを直接もらうために承認者の繁忙を伺う精神的ストレスがあったことを鑑みて、ハーモス勤怠を導入するに至ったという。

「ケイ・エム・ディ・エスさまでは、ハーモス勤怠を導入したことで、印刷・押印・手作業での集計を行わなくても済むようになりました。見やすい画面で迷わず出退勤を行い、申請・承認・集計までをデジタル化に成功したほか、リアルタイムに勤怠状況を把握する体制も構築することができています」(川島氏)

クラウドサインの導入事例:営業部と管理部 双方の課題を解決したメディカルシステムネットワーク

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最後は、「紙と印鑑」を「クラウド」に置き換え、契約作業をオンラインだけで完結させる電子契約システム「クラウドサイン」の導入事例が紹介された。

「メディカルシステムネットワークさまは、契約締結をする営業部と押印・管理をする管理部の両方に工数負担があるという課題を抱えていました。営業側は、締結が完了するまでの2~3週間を待たなくてはならず、押印をしてもらうために本社に契約書の郵送をしなくてはいけないことが負担になっていました。この郵送の負担は管理部側も同様で、押印した契約書を拠点に返送するという業務が発生していたほか、山のようにある契約書の整理や過去の契約内容の確認に苦労するという場面も多く見られました」(安藤氏)

このような課題を抱えていたメディカルシステムネットワークだが、クラウドサインを導入してからは、2~3週間あった契約のリードタイムを3~4日に短縮することに成功、押印が不要になったことで生産性も大幅に向上したという。

最後に名和氏は、ペーパーレス化することで働き方の変化として何が起こるのか、またそのためには企業が何に取り組むべきか、という内容を以下のように語った。

「現在の日本では、地方での人口減と採用難が年々深刻化しており、それを受けて長く働いてくれる若い世代の確保が急がれています。そして、この『デジタルネイティブ』とも呼ばれる若い世代が就職しやすい会社にするためには、デジタル化の第一歩としてペーパーレス化を推進することが重要です。これを実現するには、採用の段階から『デジタル化のためにこのようなツールを導入している』ということを、就職希望者に積極的に伝えることで、若い人材の獲得につながっていきます」(名和氏)