カルビーは、コロナ禍でモバイルワークを充実させ、オフィスのコンパクト化に取り組んだ企業の1つだ。モバイルワークを標準とし、2021年にはオフィスの1フロア集約を実施。面積と席数を半減させながら、会議・ミーティングスペースを増設するなど交流を重視したオフィスを構築した。
9月5日~8日に開催された「TECH+ EXPO 2023 Sep. for HYBRID WORK 場所と時間とつながりの最適解」に、同社 経営企画本部 戦略統括部 部長の難波俊也氏が登壇。「作物が実る畑のようにアイデアが生まれるオフィスに」と題し、偶発的な出会いや交流を重視したオフィスリニューアルの流れと詳細について解説した。
「TECH+ EXPO 2023 Sep. for HYBRID WORK 場所と時間とつながりの最適解」その他の講演レポートはこちら
時代に合うリモートワークに取り組んだ新オフィスプロジェクト
難波氏は講演冒頭で、カルビーの在宅勤務およびモバイルワーク制度の歴史について説明した。2014年から週2回までの在宅勤務を可能とし、2017年には勤務場所と回数を指定しないモバイルワーク制度を導入。コロナ禍の2020年6月、今後のオフィスの在り方や働き方改善を模索する部門横断型プロジェクトを設立し、7月にはオフィス勤務者を対象にモバイルワークを標準化する新しい働き方「Calbee New Workstyle」を導入した。
さらに2021年6月にはオフィスを1フロアに集約するリニューアルに着手し、9月に完了させている。オフィス改革にあたって立ち上げられた「明日の働き方プロジェクト」では、当時営業だった難波氏がリーダーを務めた。このプロジェクトでは共感・協働・共創をキーワードに、社内だけでなく社外からも「あつまりたい空間」であることを目指すと決められたという。
新オフィスのモチーフは“畑”である。これはポテトチップスやじゃがりこといった自社製品の原料にこだわり、契約生産者と二人三脚で40年以上にわたってジャガイモづくりに取り組むなど、自然の恵みを活かすことを大切にしてきた同社ならではだ。では実際のオフィスリニューアルはどのように進められたのか。
1フロア集約とコミュニケーション重視がポイント
リニューアルの主なポイントは、以下の3つだ。
エレベーターホール正面のエントランスエリアは、畑を感じられるデザインでまとめられた。カフェエリアは開放的なレイアウトとし、打ち合わせやイベント、小休憩に利用しやすいつくりにしたほか、象徴的なスポットとして巨大ロゴを設置した場所もつくられている。カフェエリアを導線の中心とすることで、偶発的な出会いと交流も促進した。
会議室は個室にカルビーグループの商品名をつけ、デザインにも商品イメージを取り入れるなど遊び心を強調。マーケティングや広報活動でも利用しやすい場になったという。
執務エリアは8つのスペースに分割され、フリースペース、専用席、集中席などを個人スペースとして用意。オンラインミーティング用スペースや複数人での執務スペースもつくった。あえて机の配置をバラバラにしたり、異なる高さの机を配置したりして、導線が一直線にならないようにすることで、業務中に自然と人と人が交わるような工夫をしている。
以前の2フロア構成では、フリーアドレスながらも、大きなくくりでどの部署がどのエリアを利用するかが分かれていた。そのため、部署を超えた交流が生まれづらかったという。新オフィスでは1フロアに集約するだけでなく、カフェエリアを中心に左右に執務エリアを設けた。
「働く場の偏りが生まれそうなデザインを避けました」(難波氏)