東北大学とセイコーエプソンは、2023年8月に、東北大片平キャンパスにおいて『セイコーエプソン×東北大学 サスティナブル材料共創研究所』(以下「共創研究所」)を開設し、本格的なプロジェクトを開始したことを発表した。

  • セイコーエプソンの市川和弘技術開発本部長と東北大の植田拓郎理事による共創研究所設立のキックオフの様子

    セイコーエプソンの市川和弘技術開発本部長(左)と東北大の植田拓郎理事(右)による共創研究所設立のキックオフの様子(出所:セイコーエプソン)

近年は循環型経済の確立に向け、バイオプラスチックや再生プラスチックなどの活用が進んでいる。しかし、新品の素材だけで製造されたバージンプラスチックと比較すると、これらのプラスチックは機械的強度や耐久性が低いことから、適用範囲が一部にとどまっているのが現状だという。そのため、今後バイオプラスチックなどの用途を広げるためには、その性能を向上させることが求められている。

東北大とエプソンは、2006年の包括連携協定締結以来、組織的な産学連携による研究開発および人材育成を行ってきたという。両者の連携において、特に2023年に新設された「東北大学グリーンクロステック研究センター」では、エプソン独自の繊維化技術であるドライファイバーテクノロジーによって生成されたセルロース繊維を、プラスチック材料と複合化することで、バイオプラスチックや再生プラスチックの強度・耐久性などの課題解決を目指すなど、繊維複合型プラスチック材料による造形技術の共同研究を進めているとする。

そしてこれらの取り組みは、2023年7月に内閣府による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期の課題「サーキュラーエコノミーシステムの構築」へ採択されたとのこと。これを受け両者は、産官学連携により社会実装に向けた開発の加速を目指すことを決定したとしている。

具体的には、セルロース繊維複合型プラスチック材料の基盤となる重要要素技術の早期確立を目指し、8月に東北大グリーンクロステック研究センターにおいて共創研究所を開設し、本格的なプロジェクトを開始したという。

  • 共創研究所が設置される東北大片平キャンパスの産学連携先端材料研究開発センター

    共創研究所が設置される東北大片平キャンパスの産学連携先端材料研究開発センター(出所:セイコーエプソン)

同研究所では、東北大が強みとする複合材料の基礎理論、シミュレーション、インフォマティクス技術や、次世代放射光施設「NanoTerasu」(ナノテラス)による高度分析技術など、同大学の資源を最大限に活用した研究開発を進めるとのこと。またSIPに参加する他企業とも連携し、研究所で得られた成果の活用範囲を広げ、セルロース繊維複合型バイオプラスチックや再生プラスチックの社会実装に向けた取り組みを加速させるとする。

またこの共創研究所は、エプソンの東北大内拠点と位置づけられ、同大学の先進的な研究シーズを提供することで新たなテーマを創出し、持続可能な未来の実現に貢献できる研究開発を幅広く推進していくとしている。