総合商社の双日は6月12日、新会社「Carbon Xtract(カーボンX)」を設立したことを公表した。新会社は、双日が2022年2月9日に九州大学(九大)と交わした「大気中のCO2を直接吸収するDAC(Direct Air Capture)技術の実用化と事業化を目指す覚書」を踏まえて設立された戦略子会社と位置付けられている。

登記上の本店所在地は東京都千代田区の双日と同一住所となっているが、事実上の活動拠点は九大の伊都キャンパス(福岡市西区本岡)の近くに位置する産学連携拠点となると同社の代表取締役社長を務める森山哲雄氏(写真)は説明する。

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    写真:Carbon Xtractの森山哲雄 代表取締役社長

今回、Carbon Xtractが九大伊都キャンパス近くに事実上の活動拠点を設けたのは、大気中のCO2を直接吸収するDAC技術の研究開発を、九大カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所の藤川茂紀主幹教授の研究開発グループが進めているからだ。

藤川主幹教授は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が内閣府より任された「ムーンショット目標4 2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」の達成に向けた研究開発を委託された研究者の1人である。

以下、森山社長から伺った事業活動状況をインタビュー形式でお伝えする。

Q:現在は何人体制で事業を進めているのでしょうか?

森山氏(以下、敬称略):双日の金属・資源・リサイクル本部ミライ事業開発課がこれまで中核となって、藤川主幹教授が開発を進めているDAC技術の事業化を検討してきました。このミライ事業開発課は2023年3月末に子会社の設立に伴って解散しており、その全員が新会社に移籍しました。

今回の新会社設立に併せて九大伊都キャンパス近くに、数人ほどが赴任しています。ここが本格的な活動拠点となることを念頭にした事業化を図っています。九大の藤川主幹教授の研究開発グループと密接した仕事を進めるためです。

当該の事業が見通せるようになれば、もっと人材を増やします。また、福岡市などでの人材採用も図るつもりです。

Q:最近の取り組みなど、どのような動きがあるのでしょうか?

森山氏:九大の藤川主幹教授も我々の社員や役員として参画できるかどうかの検討を行っています。現在、九大は国立大学法人なので、こうしたことも理論上は可能です。また、可能性としては、九大が我々に出資することも理論上は可能で、実際に検討をしていただいているようです。

また、藤川主幹教授の研究開発グループはDAC技術の事業化を進めるために、理研発ベンチャーである「ナノメンブレン」と共同研究という形で、最先端の高分子分離膜性能に基づくCO2分離を図っています。このナノメンブレンとの連携強化なども検討事項になると考えています。

筆者注:このナノメンブレンは、現在は本社を福岡市東区に置き、研究と事業化などの連絡先は福岡市産学連携交流センターに置いていると表記している。

Carbon Xtractはまだ船出したばかり。誕生間近の戦略子会社です。DAC技術の事業化を進めるために、現在は少数精鋭で臨機応変で努力を続けていますが、全員が脱炭素化に向けて大きな成長を図りたいと燃えています。