米VMwareは8月21日から24日までの4日間、ネバダ州ラスベガスで、同社の年次テクニカルカンファレンス「VMware Explore 2023」を開催した。今年で創業25周年を迎える同社は、四半世紀の間に進んだクラウド環境において、ハイブリッドクラウドの統合やマルチクラウド運用管理の効率化をはじめ、アプリケーションのモダン化やエッジコンピューティング展開の迅速化などを下支えしてきた。

8月22日の基調講演では「Taking a Cloud-Smart Approach to Harnessing the Power of Generative AI(生成AIの活用で実現するクラウドスマートのアプローチ)」をテーマに、同社が掲げる「クラウドスマート」を具現化する新製品・新機能の発表とともに、生成AI(人工知能)領域での戦略を説明した。

  • VMware Explore 2023の会場となった「The Venetian Resort」

生成AIの活用には“スマートなクラウド”が必須

冒頭、ビデオメッセージに登場したのはBroadcomのCEO、Hock Tan(ホック・タン)氏である。同社は2022年5月、VMwareを610億ドルで買収すると発表した。

Tan氏は「ブロードコムとVMwareが一つになることは、(両社の顧客に対して)大きな価値をもたらす。マルチクラウド環境でワークロードを実行するというビジョンを前進させ、安定的なセキュリティやアプリケーションのイノベーション、パートナーエコシステムの成長を支援する。(中略)買収後は直ちに年間20億ドルの追加投資を行い、顧客価値をより向上させる。(買収は)2024会計年度中に完了すると確信している」と述べた。

  • ビデオメッセージに登場したBroadcomのCEO、Hock Tan(ホック・タン)氏。実は来場しており、メッセージの後に来場席から手を振った

続いて登壇した米VMwareでプレジデントを務めるSumit Dhawan(スミット・ダーワン)氏は、クラウドスマート戦略について説明した。

「クラウドスマート」とはクラウドの利点を最大限に活用しながら、セキュリティ・コンプライアンスや一貫した運用管理の確保、パートナーエコシステムなど、複数のクラウドを運用するうえでの課題を解決するソリューションを包括的に提供するアプローチを指す。その成果を同氏は以下のように強調する。

「近年、われわれはクラウド・インフラストラクチャのモダナイゼーションを皮切りにVMware Cloud Foundation(以下、VCF)上で仮想ストレージ、ネットワーキング、自動化を統合してきた。VCFの成長率は30%増に達しており、現時点で最も急速に成長しているクラウドと言っても過言ではない。その理由は、顧客が(VCFで提供する)低コスト、セキュリティ、高い耐障害性を実感しているからだ。実際、VCFの導入でネットワークとセキュリティの運用コストは66%減、ROI(費用対効果)は171%増という調査結果を得ている」(Dhawan氏)

  • 米VMwareでプレジデントを務めるSumit Dhawan(スミット・ダーワン)氏

基調講演では「クラウドモダナイズ」「アプリケーションデリバリの高速化」「ワークスペース環境の自律化」「エッジコンピューティング管理」の各カテゴリで強化された新機能や新製品が発表された。

新製品の目玉「vSAN Max」と「VMware NSX+」発表

クラウドモダナイズの目玉となった新製品が「VMware vSAN Max(以下、vSAN Max)」と「VMware NSX+」である。

vSAN Maxは、ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)であるvSANの新製品となる分離型ストレージで、ストレージ容量とパフォーマンス、耐障害性が大幅に向上した。具体的にはクラスタ当たり最大24ノード、8.6PT(ペタバイト)まで拡張可能で、IOPS(I/O per Second)は最大360万を実現する。

vSAN Maxは2022年に新アーキテクチャとして発表された「VMware vSAN Express Storage Architecture」上に構築されるため、個別デバイスの障害からの回復が最大92%高速化されるという。なお、vSAN Maxは既存のVMware vSANとは別ライセンスが適用され、テラバイト単位のサブスクリプションとしてVMwareの2024年度下期に提供される予定だ。

一方、VMware NSX+は、2022年に公開された開発プロジェクト「NorthStar」の製品版で、マルチクラウド環境向けの新しいクラウド管理型サービスである。

  • VMware NSX+の概要

ネットワーク仮想化のプラットフォームであるVMware NSXは、ネットワークリソースを物理ハードウェアから分離することで、ネットワークの構築や変更を迅速に実行できる。ネットワーク内のセグメントを細分化する「マイクロセグメンテーション」で、アプリケーションやサービスごとにセキュリティを強化できるのが特徴だ。

VMware NSX+はレイヤー2からレイヤー7までのネットワークサービス機能を、SaaS(Software as a Service)として提供する。具体的には一元化されたセキュリティポリシーの策定と適用、包括的なネットワークとアプリケーションの可視化、NDR(Network Detection and Response)による多層防御などだ。

Dhawan氏は「NSX+は、マルチクラウドにまたがるすべてのネットワークとセキュリティポリシーを、単一のクラウド コンソールで一元的に可視化・管理できる」とそのメリットを強調する。

さらにクラウドのセキュリティ強化機能として、「VMware Ransomware Recovery」の新機能も発表した。同機能はランサムウェア攻撃の被害を受けたワークロードをクラウド上で復旧させるサービスで、隔離されたリカバリ環境(IRE)内で仮想マシンの振る舞いを分析し、ファイルレス攻撃からリカバリできる。

最新版では仮想マシンの復旧を並列処理することで高速化を図った。またプレビュー版として、リカバリのワークフローをvSANのネイティブ スナップショットと統合し、データ転送を最適化する「Cybersecure Storage」も公開された。

さらに、VMware Cloudでは企業のクラウド活用度合いに応じ、インフラ構築や運用管理を支援する5つのエディション(Essentials、Standard、Pro、Advanced、Enterprise)のソリューションパッケージも提供していくという。

  • 「VMware Cloud」の5つのエディション。企業は自社の状況に応じて選択できる