8月24日から25日に東京ビッグサイトにて開催されていた「大学見本市2023~イノベーション・ジャパン」にて、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)は、ICTを使ったそろばん学習システムやVRのプレゼンテーション訓練システムなどの展示を行った。
実際にさわりながら学習できるICTそろばんシステム
そろばんを学ぶためのデジタルツールである「ICTそろばん学習システム」は、現実空間にAR(拡張現実)を表示させるための目印となる「ARマーカ」を市販のそろばんに貼り、書画カメラとミニPC、卓上ディスプレイを組み合わせることで、卓上ディスプレイ上にそろばんを置くだけで、そろばん学習支援AIが個々人のレベルに合わせた問題を生成、答えの正誤を判定してくれるというもの。
このシステムの特徴としてはまず、実際にそろばんにさわりながら学習できる点が挙げられる。最近ではタブレットなどのアプリケーションでそろばんを学習することもできるが、実際にそろばんに触れながら学習できることでよりよい学習効果が期待できるという。
また、すでにそろばんを持っている家庭も一定数いるため、そうした家庭にあるものを活用し学習できるシステムを作りたかったとブース担当者は語っていた。さらに、教育の普及がまだまだ進んでいない国ではそろばん学習を推進しようと思っても、そもそも使いこなせる指導者が不足しており、そうした環境下においても導入できるメリットを打ち出すことで、そろばん学習を通じて得られる計算能力を伸ばすことができるようになるだろうともしている。
同システムを使用すると、計算問題の進捗状況やその正誤に合わせてそろばんの上部に「問題」が、下部に「指摘」が動的表示されることで学習が支援される。書画カメラを使った高精度な入力値の推定に加え、卓上ディスプレイの上に置かれたそろばんの配置状況に応じて画面もそれと同じ向きに表示されるといった仕組みがあり、どの方向や位置においても学習することが可能となっており、必ずしも卓上ディスプレイ上の決まった位置にそろばんを置く必要はないとしている。
思いやりをもったAIによるVRプレゼンテーション訓練
一方のVRプレゼンテーション訓練システムは、その製作背景として、プレゼンテーション訓練中のユーザの問題点を即座に発見するとともに、個々人にとってよりよいタイミングで問題点を伝える仕組みを作りたかったという想いがあるという。指摘のタイミング次第では訓練者がマイナスの感情を抱くこととなり、訓練の邪魔になる可能性があるが、人間ではそうした相手の空気感を読み取ることが難しい。
こうした課題を踏まえ同システムでは、ユーザの心的状態をモデル化。視線や頭部動作、音声、身体動作、発汗、心拍などから指摘を邪魔だと感じる度合いと、訓練に役立つと感じる度合いの推定受容度を基にフィードバックの表示可否の判断を行うことを可能としたとする。
ちなみに、この仕組みはプレゼンテーションだけではなく、医療技術やスポーツなど行動の連続性が需要な訓練全般にも使用できるとしており、使用するユーザの訓練したい内容に合わせてカスタマイズも可能だとしている。