資生堂は8月22日、抗酸化・抗炎症効果を有するホルモン「メラトニン」の肌での合成が夜間に高まること、そして「エクトイン」が肌におけるメラトニン合成酵素遺伝子の発現を促進することを発見したと発表した。

肌を健やかで美しく保つためには、肌本来の力を引き出し、肌の生命力を高める恒常性(ホメオスタシス)を維持することが重要となる。資生堂は、肌の恒常性を維持するために、肌の免疫を司るランゲルハンス細胞が重要な役割を果たしていると考え、肌トラブルを引き起こす因子から肌を守り、過酷な環境においても健やかな肌を保たせる「肌の免疫機能」に焦点を当てた研究を進めてきたという。

そして同社は、人間の体がもつ“体内時計”の仕組みにも着目。これまでにも、肌の機能が24時間のリズムを刻んでおり、日中は皮脂分泌量が多く、夜間には皮膚バリア回復脳が低下することや、ヒアルロン酸合成酵素遺伝子の発現が夜間に高まることなどを発見してきたといい、加えて、ランゲルハンス細胞の活性が24時間のリズムを刻んでおり、日中に防御脳を上げることも見出しているとする。

そして今回は、肌の免疫機能をさらに発展させ、どんなときにも健やかな肌を維持できる状態を目指し、特に夜間に注目して研究に取り組んだとしている。

今回の研究ではまず、メラトニン合成酵素の遺伝子発現の1日の中でのリズムを調査したとのこと。メラトニンは、アミノ酸のトリプトファンを材料とし、セロトニンを経て合成されており、脳で合成されるメラトニンが睡眠の質にも関わることや、その合成が夜に高まること、そしてメラトニン合成に関わる酵素は皮膚でも発現していることが知られている。

そして今回、メラトニン合成に関わる酵素の遺伝子発現リズムを調べた結果、メラトニンの最終合成を担うASMT遺伝子の発現が、夜間に最も高まることが分かったという。

  • ASMTの遺伝子発現が、夜に発現が高まるBMAL1と同様で、昼に発現が高まる遺伝子のPER1とは逆の動きをすることが確認された。

    ASMTの遺伝子発現が、夜に発現が高まるBMAL1(青線)と同様で、昼に発現が高まる遺伝子のPER1(黄線)とは逆の動きをすることが確認された。(出所:資生堂)

資生堂では次に、肌におけるメラトニン合成酵素遺伝子の発現を高める成分を広く探索したとする。その結果、エクトインに肌の細胞におけるメラトニン合成酵素遺伝子発現を高める効果があることを発見したとしている。

  • エクトインの添加によりメラトニン合成酵素遺伝子の発現量が高まることも確認された。

    エクトインの添加によりメラトニン合成酵素遺伝子の発現量が高まることも確認された。(出所:資生堂)

今回の研究では、資生堂が長く取り組んできた肌の免疫と生体リズムに関する研究を融合することで、夜間における肌でのメラトニン合成遺伝子の発現の高まりと、その発言を促進するエクトインの効果が発見された。

これにより、夜間に高まるメラトニンの合成をエクトインによって促進することで、ダメージ因子と戦う「肌の免疫機能」の強化が期待できるとしている。そして資生堂は今後、肌の免疫リズムに着目した新たなスキンケアの価値創造に向けて応用することで、ひとりひとりの美しさを引き出し、健やかな肌を守り抜くことを目指すとしている。