東北大学は7月12日、光ファイバと同じ材料と形状でファイバ型光制御デバイスへの応用が期待できる新材料「完全表面結晶化ガラスファイバ」を創製し、さらに独自の緻密な結晶化制御により、光学単結晶にも匹敵する超低光損失を達成したと発表した。

同成果は、東北大大学院 工学研究科 応用物理学専攻の中村拓真大学院生(日本学術振興会特別研究員)、同・藤原巧教授、同・高橋儀宏准教授、東北大大学院 工学研究科 技術部の宮崎孝道技術専門職員らの共同研究チームによるもの。詳細は、先進的なセラミックス材料に関する全般を扱う学術誌「Ceramics International」に掲載された。

光通信において高性能化の鍵とされるのが、光源の自在な制御と、制御された光をその性質を維持しながら伝送する技術だ。通信量の増大は留まるところを知らず、今後、IoTや第6世代通信などが実現されれば、さらなる大容量化が必要となることは明白だ。それに対応するためには、制御・伝送の際に生じる光損失や雑音を今まで以上に減らす工夫が強く求められる。制御には光の色の変換や振幅・位相の変化があり、二次非線形光学効果と呼ばれる現象が利用される。この現象は特殊な結晶の持つ空間的構造に基づくもので、光制御デバイスはその特性を持つ単結晶材料から構成されるのが一般的だ。

一方で光の伝送には、透明性や加工性に優れる非晶質のガラス製光ファイバが使用されており、これらガラスの特徴は、そのランダムな空間的構造に由来する。このように、従来の光通信システムは役割別に適した材料が用いられており、異なる部材の接続によって通信が成り立っている点が特徴の1つといえる。

しかし、これら材料間の光学的および熱的性質の不整合から、その接続は光学素子を介した物理的に非接触な状態であり、システムの不安定化を引き起こすという。さらに、光の回折損失を最小限にするために制御デバイスが大型・複雑化する傾向があり、高い導入コストを要してしまうとする。これらの要因から、伝送のための光ファイバ通信網と親和性が高く、一括化が可能なファイバ型の光制御デバイスの開発が望まれていた。