東京都市大学(都市大)は7月4日、中国貴州省の中期三畳紀ラディン期(約2億4000万年前)の地層「ツーカンポ層」から大量に発見される、成体で体長30cmほどの小型海生爬虫類「ケイチョウサウルス(Keichousaurus)」の骨を顕微鏡で解析し、誕生後2年間で急速に成長することに加え、雄と雌の形態差が誕生後1年目から2年目にかけて現れることを明らかにし、化石爬虫類の“思春期”を特定したと発表した。

同成果は、都市大 理工学部自然科学科の中島保寿准教授らの研究チームによるもの。詳細は、ヒトを含めた生物に関する全般を扱う学術誌「Current Biology」に掲載された。

ライオンのたてがみやクジャクの羽根など、同種の動物において雄と雌の表現型の違い(性的二型)は広く見られる現象だ。それは性成熟が進行する思春期(春機発動期)に現れることが多く、成熟した個体同士でより顕著になる。性的二型は、動物の成長と繁殖および進化を理解する上で重要な情報になるという。

古生物の中にも、性的二型があったと考えられる種がいくつかある。ただし、その確認には保存状態の良い化石標本を大量に必要とするため、実際に確認された例は多くないとする。

今回研究チームが着目したケイチョウサウルスは、「鰭竜(きりゅう)類」というグループに属する海生爬虫類だ(日本の「フタバサウルス(フタバスズキリュウ)」も同じ仲間)。ほとんどの種類で小さな頭と長い首を持つことと、水中で移動しやすいよう長い指と水かきが発達したり、手足全体がボートのオールのような形になっていたりするなどの特徴が挙げられる。

ケイチョウサウルスは、これまで無数の個体の化石が発見されており、保存状態も極めて良く、全身の姿形を良く伝えているという。その成熟個体の中には腕の骨の形で分けられる2タイプがあり、この違いは性的二型と考えられている。そして、お腹に小さな胎仔が入ったままの化石が発見されたことから、どちらが雌なのかも明らかにされていた。

今回の研究では、成熟した雄のみに見られる上腕骨の特徴が、成長のどの段階で現れたのかを解明するため、雄11個体、雌6個体、性別不明の幼体1個体の、合計18個体の化石標本から上腕骨の組織切片を作成し、その年輪(成長輪)を観察したという。

その結果、成熟した雄においては年輪の1本目から2本目にかけて、輪郭が円形から三角形に変化していることが判明。この結果は、ケイチョウサウルスにおいて、生後1年目から2年目にかけての比較的早い時期に性的二型が現れることを示すとする。

  • ケイチョウサウルスの前肢の骨(左)と、上腕骨の組織切片(右)。成熟雄と成熟雌の上腕骨には明確な形態差が見られ、成熟雌の断面は円形、成熟雄の断面は三角形になる。成熟雄の上腕骨では、生後1年目と2年目で年輪が円形から三角形に変化している。

    ケイチョウサウルスの前肢の骨(左)と、上腕骨の組織切片(右)。成熟雄と成熟雌の上腕骨には明確な形態差が見られ、成熟雌の断面は円形、成熟雄の断面は三角形になる。成熟雄の上腕骨では、生後1年目と2年目で年輪が円形から三角形に変化している。(出所:都市大Webサイト)