福井県立恐竜博物館(FPDM)と福井県大野市の両者は4月14日、中部縦貫自動車道の一部を構成する大野油坂道路のトンネル工事で排出された岩石から、中生代の後期ジュラ紀の大型アンモナイト化石2点を発見したと発表した。
中部縦貫自動車道は、長野県松本市を起点とし、岐阜県高山市、大野市を経て福井市に至る約160kmの自動車専用道路だ。中央自動車道、東海北陸自動車道、北陸自動車道を連絡して広域交通の円滑化を図ることを目的としており、現在、国土交通省によって整備が進められている(全線開通時期は未発表)。大野油坂道路は、中部縦貫自動車道の一部を構成し、大野市東市布から中津川に至る約35kmの区間を指す。
FPDMと大野市は2015年11月に、大野市から出土する化石の共同調査に関する協定書を締結。2018年度からは、大野油坂道路の工事で排出される岩石に含まれる化石も対象とし、その周辺地域における野外調査も同時に実施中だ。そして2020年4月10日、現在掘削中の川合トンネル(仮称、全長2550m)の西側坑口から約311m地点の排出岩石から、大型のアンモナイト化石が1点、さらに同年10月22日には約377m地点の岩石からも大型のアンモナイト化石1点が収集されたという。
同調査では、他にも多くの軟体動物化石が収集されているが、これらの資料は時代未詳の大野市の地質時代を明らかにするだけでなく、東アジアにおけるジュラ紀の海棲動物群集や古海洋環境を明らかにする上で重要であるため、部出作業(化石クリーニング)を実施して調査を進めてきたとする。
今回発見されたアンモナイト化石2点は、いずれも後期ジュラ紀の3つある時代区分のうちで最も古いオックスフォーディアン期(約1億6350万年前~約1億5730万年前)に生息していた種類であることが判明。この発見により、その地質時代が確認できていなかった大野市和泉地区川合周辺に分布する地層について後期ジュラ紀の国際対比に役立つ地層があることが明らかにされたとしている。
また2点の化石はそれぞれ、殻の直径(測定可能な最大値)が210.1mmの「ペリスフィンクテス科」の一種と、同168.6mmの「クラナオスフィンクテス亜属」の一種であると判明した。
後期ジュラ紀ではアンモナイトの大型化が知られているが、国内産ジュラ紀のアンモナイト化石は通常は直径10cm以下のものが多く、今回のようにおよそ21cmと17cmという大型のものは、これまでほとんど知られていないという。今回の化石は、生物が大型化したオックスフォーディアン期を特徴づける種類であり、国内ではまだ報告の無い種類だとする。研究チームは、新種の化石である可能性を含め、今後の研究および追加資料の発見が期待されるとしている。
またFPDMでは、4月21日(金)から5月14日(日)まで、令和5年度企画展「THE 恐竜 in 福井 ~恐竜博物館を飛び出した恐竜たち~」を、福井市下六条町の福井県産業会館1号館で開催する予定で、今回発見されたアンモナイト化石2点も一般公開を予定しているとのことだ。