米Miroの日本法人であるミロ・ジャパン(以下、ミロ)は6月30日、ビジュアルワークスペース「Miro」について、2024会計年度の第1四半期(2023年2月~5月)に約50の新機能を追加したと発表し、そのデモを記者向けに実施した。

Miroといえば、オンラインホワイトボードを想像する方も多いはずだ。画面上で付箋にアイデアを記入して整理できるため、ブレインストーミングのような場面で有用だ。これまでに国内で約120万人のユーザーを獲得しているという。

AIでプロジェクトの進行を支援する新機能

説明会では、特にAI(Artificial Intelligence:人工知能)を活用した「Miro AI」のベータ版が披露された。これは、生成AIなどを活用して、プロジェクトにおけるアイデア出しの可視化や情報収集などを支援する機能群だ。なお、同機能はベータ版としての提供であるため、一部は日本語未対応である。

付箋の生成

付箋の生成は、AIによってブレインストーミングやワークショップの「はじめの一歩」を支援する機能だ。質問を入力することで、それに適した回答を記載した付箋を自動生成するため、そこから議論を開始できる。

デモでは「飛行機の種類」を生成したところ、「ボーイング747」「エアバスA380」「ボーイング787 / ドリームライナー」などと記載された付箋が生成された。この後に、人がアイデアを付箋に書き込むことで議論をスムーズに開始できる。

  • AIにより自動生成された付箋

    AIにより自動生成された付箋

感情ごとのクラスター化

ワークショップのフィードバックやリサーチの結果、ユーザーの声などを記載した付箋を、記載内容の感情に応じてグループ分けする機能も備える。それぞれの付箋を「ポジティブ(肯定的)」「ニュートラル(中立)」「ネガティブ(否定的)」に自動で振り分け可能だ。この結果に基づいて、各トピックを掘り下げられる利点があるという。

例えば、「肉は好き?」という質問に対する回答について、「最高」「好きです」などはポジティブに、「肉!」といった意見はニュートラルに、「嫌いです」「無理」などはネガティブな意見として分類するといった具合だ。

  • 自動で感情ごとに分類された付箋

    自動で感情ごとに分類された付箋

キーワードごとのクラスター化

付箋に記載した内容は、そのキーワードやトピックに応じた分類も可能だ。類似する付箋を集約し、その種類に応じて各クラスターにはタイトルが生成される。よりインパクトのある洞察を引き出して、明確な意思決定を支援するという。

さまざまな飲料を記載した付箋の中から、「緑茶」「麦茶」などのお茶を同一のクラスターに、「アップルジュース」「オレンジジュース」などのジュースを同一のクラスターに分類できる。

  • トピックに応じた分類も可能だ

    トピックに応じた分類も可能だ

画像の自動生成と背景削除

アイデアの可視化や発表資料の作成を支援するために、MiroはAIによる画像生成機能を搭載した。透明な背景を持つ画像をその都度探すことなく、プレゼンテーション資料の作成を進められる。

  • 自動生成した海上プラントの画像

    自動生成した海上プラントの画像

  • 自動生成した画像からも背景を削除可能

    自動生成した画像からも背景を削除可能

マインドマップの生成

マインドマップを自動生成することで、新たなトピックの探求や知識の深化が期待できる。マインドマップとは、さまざまなアイデアや情報の流れなどを関連付けて図示するものだ。

「イベントの準備」とAIに指示を出すだけで、準備に必要だと思われる「プログラム」や「予算」などを可視化して示す。

  • 生成したマインドマップ

    生成したマインドマップ

シーケンス図

チーム単位での開発工程や技術設計に必要な、シーケンス図の生成にも対応可能となった。「SAML認証の仕組みを開発する工程を示してください」のように指示を出すことで、シーケンスを生成する。

  • 生成したシーケンス図を用いて開発工程を進められる

    生成したシーケンス図を用いて開発工程を進められる

コードの生成

Miroでプログラムのソースコードも自動生成できるというから驚きだ。テキストで指示を出すことでコードを生成し、タスクの完了までにかかる時間を概算で把握できるようになった。「じゃんけんの勝敗を判定するプログラムをPythonで記述してください」と入力すると、数秒後にはコードが生成される。

  • 生成されたコード

    生成されたコード

これらのAI機能について、テキストの生成にはChatGPTが、画像の生成にはStable Diffusionが用いられているそうだ。なお、Miroユーザーが入力したデータが生成AIの学習に使われることはなく、すでに学習済みのデータを活用しているため、情報漏えいなどの懸念は無いとしている。

こうした新機能の追加について、ミロの社長である五十嵐光喜氏は「2011年に単なるオンライン上のホワイトボードとしてサービスを開始したMiroだが、現在はプロジェクトのイノベーションをEnd to Endで支援できるプラットフォームとなった。日本の人たちは、カイゼン・ワイガヤ・大部屋方式など、ディスカッションを通じて事業を生み出すことが得意なDNAを持っていると思う。Miroはまさにデジタルでこれを支援する最適なサービスであるはず」と述べ、今後も現場を支えるワークスペースとして改良を続けていく方針を語った。

  • ミロ 代表執行役社長 五十嵐光喜氏

    ミロ 代表執行役社長 五十嵐光喜氏