岡山大学(岡大)は6月28日、ノンアルコールビールやアルコールを除いたビールを餌に混ぜてマウス肺がんモデルに食べさせたところ、肺発がん物質による肺悪性腫瘍の発症数が有意に減少し、うち約2~5割(15匹中3~8匹)のマウスには悪性腫瘍が発生しなかったことを確認したと発表した。

同成果は、岡山大大学院 医歯薬学総合研究科の高田潤大学院生、同・大学 学術研究院 医歯薬学域(薬)の有元佐賀惠元准教授、同・大学病院の木浦勝行元教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、遺伝子と環境に関する全般を扱うオープンアクセスジャーナル「Genes and Environment」に掲載された。

近年、日本人の死亡原因の第1位はがんであり、今では2人に1人が罹患するとまでいわれ、死亡者数も増加傾向にある。がんの中で最も死亡者数が多いのが肺がんであり、日本の2021年の統計によると死亡者数は男性で1位、女性でも2位となっている。さらに、肺がんは予後も悪く、5年相対生存率が男性29.5%、女性46.8%と治りにくいことでも知られている。

そうした中で、研究チームが以前から注目してきたというのがビール類であり、これまでにも、ビールが焼け焦げ変異原のDNAへの損傷を抑制する事を報告している。今回の研究は、マウスモデルを用いてノンアルコールビールやアルコールを除いたビールを摂取させることで、肺がんの生成を抑制できるかどうか調査するもので、ノンアルコールビールの実験では、マウスに水もしくは水で練った練り餌を与えて肺発がん物質を投与したところ、水だけのマウスでは平均5.5個の肺がんができたが、ノンアルコールビールを練り餌に混ぜて投与する実験を2回実施したところ、マウスにできた肺がんの数はそれぞれ平均3.0個、1.7個と有意に減少したことが確認されたという。

  • 需要発生数の比較

    需要発生数の比較。15匹中2匹または3匹のマウスには、肺腫瘍が見られなかったという(出所:岡山大)

また、アルコールを抜いたビールの実験では、マウスに水と水で練った練り餌を与えて肺発がん物質を投与した群では93.3%のマウスに肺がんが確認されたが、アルコールを抜いたビールを練り餌に混ぜて投与した群では53.4%のマウスに肺がんができていないことも確認されたとする。

さらに、ノンアルコールビールや、アルコールを抜いたビールによる発がん抑制の作用機構を調べたところ、結果としてDNA損傷に対する修復促進作用によってがん発症を予防していることが判明。増殖シグナル伝達阻害により、できたがん細胞の増殖を抑制する効果を表していると考察できると研究チームでは説明している。

なお、研究チームはマウスモデルではあるものの今回の実験結果が今後のがん予防へ貢献することが期待されるとコメントしている。