病院給食などの完全院外調理サービスを提供している第一食品はこのほど、パナソニック コネクトと共同で開発したトレイメイク自動化システムを相模原工場に導入したことを発表した。同システムは、入院患者の病態に適合した調理品を組み合わせ、トレイ上に置くトレイメイク工程を自動化するもの。同システムの導入により、熟練者だけでなく誰でもトレイメイクを行えるようにすることで、病院給食における作業の平易化と省人化につなげたい考えだ。
病院給食は365日3食欠かさずの提供と、さらに朝食の仕込みや夕食後の洗浄作業のため早朝・深夜勤務が必要となり、人材確保が難しく深刻な人手不足に直面している。中でも、トレイメイク工程は熟練の技が必要だ。患者ごとの病態やアレルギーに合わせて多種の調理品を組み合わせることから約1億通りの組み合わせが存在し、献立も毎日変わるため組み合わせを覚えることは極めて難しい。
一般的な病院給食ではすべての作業を病院厨房で実施するが、第一食品が手掛ける完全院外調理は、トレイメイクを含めた病院給食業務の大半をセントラルキッチンに集約している。つまり、セントラルキッチンでは数千人分の食事を短時間で集約して生産しなければならない。朝昼晩3回配送する必要があり、1ラインの人員は最低でも約14名が必要だった。
第一食品 代表取締役社長の小宮仁氏は「トレイメイクの作業員は、トレイに載せている食札を一瞥して瞬時に食事内容を把握しなければならない、常に頭を回転させ体を動かす必要がある。加えて、絶対に間違ってはいけないというミッションクリティカルな作業をしなければならない。1名の人材育成に約2年かかり、誰でも簡単なトレーニングだけでトレイメイクを行えるようにすることが積年の課題だった」と説明した。
相模原工場に導入したトレイメイク自動化システムは、トレイ供給機とメインコンベア、皿供給機4台から構成されている。
スタッフは皿供給機から出てくる盛付済の皿を、モニタの指示に従ってロボットが取り出すトレイに置く。そしてチェッカーと呼ばれるスタッフが配膳内容の確認と盛付けの見栄えなどをチェックし、ラックと呼ばれるスタッフが食札をトレイに貼り付け、カートにトレイを収納する流れだ。3時間あたり1700食以上生産することができ、主食皿、主菜皿、副菜皿、汁椀などの複数の皿種に対応している。
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皿配膳のスタッフは、モニターの指示に従って表示されている皿をタイミングよく届くトレイに置く
同システムにより、運び出されたお皿をトレイに置くだけの作業で正確なトレイメイクができるようになった。「作業スタッフ数を約20%削減でき、入社2日目のスタッフでも作業できるようになった。チェッカーでのNG件数も減り、配膳以外の品質確認に注力できるようになった」と、小宮氏は補足した。
第一食品は今後、大阪府、兵庫県、岡山県、神奈川県にある6つの自社工場に同技術を展開し、ボトルネックを解消することで工場新設を加速していく考え。加えて、セントラルキッチンの設立を検討している医療法人との提携も進めていく方針。2022年12月期の売上高は57億円だが、20年後の2043年までに3000億円の売上高を目指すとのことだ。