東京商工リサーチ(TSR)が6月20日に発表した調査結果によると、コロナ禍(新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大)で全国の企業の9.8%が何らかの人員削減を実施しており、そのうち61.5%が現在人手不足状態に陥っていることが分かった。
同調査は同社が6月1日~8日にかけて、全国の企業を対象としてインターネットにより実施したものであり、有効回答社数は6071社。
コロナ禍(概ね2020年2月以降)において、希望退職・退職勧奨・整理解雇・補充採用の停止のいずれかを実施した企業は全体の9.8%あった。実施項目の中で最も多かったのが補充採用の停止(5.1%)であり、以下、退職勧奨(1.7%)、整理解雇(1.6%)、希望退職者の募集(1.4%)と続く。
業種別では、観光業や冠婚葬祭業などを始めとする「その他の生活関連サービス業」が全体の45.2%で最も多い。以下、コロナ禍による外出自粛などで需要が縮小したアパレル小売(40.0%)、印刷・同関連業(33.7%)の順だった。
コロナ禍で人員削減を行った企業に現在の自社の人員の充足感を聞いたところ、61.5%が「人手不足感がある」と回答している。半面、「人手過剰感がある」は11.4%に留まった。
人手不足と回答した企業の比率を業種別に見ると、飲食店が100%で最も多く、以下、総合工事業(85.7%)、設備工事業(78.5%)と続く。
上位10業種のうち、3業種が建設関連だった。建設関連はコロナ禍当初、店舗や商業施設を中心に工期延期や工事の中止などにより、人員削減を余儀なくされたが、経済活動の再開に伴い人手不足感は高まっているという。
また、76.9%が人手不足感があると回答したその他の生活関連サービス業では、旅行会社や結婚式場運営会社を中心に需要が回復し、人手不足を訴える企業が相次いでいるとのことだ。
サービス業を中心に業況の回復が期待される一方で、企業側では採用における賃金の上昇が深刻化しているという。再び需要が戻る中で需要の増加が見込める産業に特化した雇用支援など、官民一体の対策も急務となっていると同社は指摘する。