Amazonは6月14日、同社が提供するオーディオブック「Audible(オーディブル)」に関する記者会見を開き、Audibleの現状や戦略、新規コンテンツプロジェクトなどを発表した。

Audibleは書籍を朗読した音声コンテンツなどを配信しており、有料会員(月額1500円)は、文学作品やミステリー、ビジネスや自己啓発系の書籍、ポッドキャストなどの12万作品以上を、プロの声優や俳優の朗読で好きなだけ聞くことができる。

また、オフライン再生に対応しており、再生速度の調整なども可能。通勤通学中や家事中、リラックスタイムなどに利用したくなる「聴く読書」として昨今注目されているサービスだ。Audibleの創設者であるドン・カッツ氏は「目は忙しいけれど、心は空いている時。それが私たちAudibleが、満たしたいと思う時間です」と述べている。

  • Audible サービス画面イメージ

    Audible の画面イメージ

  • Audibleのグローバルでの実績

    Audibleのグローバルでの実績

Audibleは現在、47言語に対応しており世界180カ国で数百万人のユーザーを抱えている。2022年の総聴取時間は約40億時間と前年比で13%成長した。タイトルのダウンロード数は1人あたり年約20冊で、また、ユーザーの75%は過去12カ月以内に電子書籍もしくは紙書籍を読んでいる。「オーディオブックを聞いている人は多くの本を消費している傾向がある」と、Audible事業部 カントリーマネージャーの逢坂志麻氏は補足した。

  • アマゾンジャパン Audible事業部 カントリーマネージャー 逢坂志麻氏

    アマゾンジャパン Audible事業部 カントリーマネージャー 逢坂志麻氏

日本国内においても“聴く読書”の需要は高まっている。Audibleは2022年1月より国内でも聞き放題のサービスを開始し、コンテンツとマーケティング施策も強化した。例えば、テレビCMの放映や、村上春樹ライブラリーでのイベント開催などを実施した。また、Audibleで発表した後に書籍化する、つまり音声ファーストで著者に物語を書いてもらう「オーディオファースト作品」も拡充したとしている。

  • Audibleの日本国内でのこれまでの取り組み

    Audibleの日本国内におけるこれまでの取り組み

その結果、会員数は2023年5月現在、2022年1月(ビジネスモデル移行前)比で67%増加した(数値は非公開)。さらに聴取時間は260%増加し、1人あたり新しく触れたタイトル数(月間)は約4倍になった。

  • 国内会員数は右肩上がり(数値は非公開)

    国内会員数は右肩上がり(数値は非公開)

また、聴き放題になってから支持されるジャンルに変化が見られたという。聴取時間において、いままではビジネス書、キャリア書、自己啓発本といったカテゴリーが多くを占めていたが、ビジネスモデル移行後は、文学やフィクション、ミステリーなどの小説を聴く時間も急増したという。

また、ビジネスウーマンや子育て中の夫婦など、女性の利用が増加。加えて、「英語を勉強したい理由で利用する学生や、パソコン疲れで目を休める目的で利用するシニア層にも人気が出てきている」(逢坂氏)とのこと。

  • 顧客行動にも変化が見られた

    顧客行動にも変化が見られた

同社は今後、さらなるコンテンツの拡充を図る。例えば、2022年は村上春樹作品の10作品を発表したが、2023年は新たに7作品を追加する予定。出版社と著作が連携して創るオーディオファースト作品も順次追加していく。これらの作品は、映画や舞台で活躍している俳優陣や声優の朗読で提供する。

  • 2023年に追加する村上春樹作品のラインナップ

    2023年に追加する村上春樹作品のラインアップ

  • 映画や舞台で活躍している俳優陣たちが朗読を行う

    映画や舞台で活躍している俳優陣たちが朗読を行う

ポッドキャストやオーディオエンターテイメントの作品も同様に拡充していく。例えば、「聴くアニメ」として、国民的アニメの『ルパン三世』を題材にした3作品の音声化を行う。これを皮切りに、今後多くの名作タイトルをアニメとして提供していきたい考えだ。

  • 国民的アニメの『ルパン三世』を題材にした3作品を音声化

    国民的アニメの『ルパン三世』を題材にした3作品を音声化

「継続的に高品質なオーディオブックやオリジナルコンテンツの制作を行うことで、ユーザー一人ひとりが自分の好みに合った作品を、好きな時に好きなだけ聞けるようにしていきたい。Audibleは、メディアカテゴリーを再発明し、オーディオエンターテインメントに革命を起こす原動力になる」(逢坂氏)