グーグル・クラウド・ジャパンは5月23日から日本全国4都市で開催する「Google Cloud Day ’23 Tour」をスタートした。本イベントは、開発者やビジネスリーダーへ向けてGoogle Cloudの最新ソリューションと事例を紹介することを目的としている。本稿では、ツアーの初日となる23日の基調講演の内容を振り返る。

「組織のアジリティを高める」DX推進のカギになる3つのポイント

ツアーの幕開けを告げた本セッションには、まずGoogle Cloud 日本代表の平手智行氏が登壇。Google Cloudの導入数が増加していることに触れ「デジタルネイティブな企業のみならず、国内大手企業のクラウドシフトが大きく進んでいる」とコメントした。

平手氏は外部機関の調査を引用し「2年前に比べて日本企業のDXは進んでいる。技術革新が進み人々の価値観が多様化したことで、想像以上のスピードで物事が変化している」との見解を述べた。

  • Google Cloud 日本代表の平手智行氏

だが、全ての企業がDXを十分に推進できているわけではない。これからDXに取り組む企業はどのような点を意識すべきなのだろうか。

DXを実現、推進するために最も重要なポイントとして平手氏が挙げるのが、「組織のアジリティを高め、状況に応じて柔軟かつ迅速に対応していくこと」である。そして、そのために必要な要素が次の3点だ。

①データの利活用

不確実な時代の中では、データに基づいた経営(データドリブン経営)が求められる。平手氏は、グローバル企業ではデータ分析やAIの活用について「民主化」と「投資の増加」が進んでいることに言及。多くの経営者がデータとAIの積極的な活用に着目し、投資することでDX促進を進めていると述べた。

Google Cloudでは、企業のデータ利活用を支援すべく「ジェネレーティブAI」の一般化を推進していくようだ。同社が、大規模言語モデル「PaLM2」を発表したのは既報の通り。これを皮切りにGoogleのあらゆるアプリケーションとの連携を、ガバナンスにも配慮した上で促進していくとした。これにより、企業ではデータ利活用の範囲を最大限に高められるという。

②内製化

コストの削減や開発、運用のスピードが求められる内製化。だからこそ「内製化を実現することで組織のアジリティを高められる」と平手氏は分析する。内製化のプロセスを踏むことで、社内変革の拡大も期待できることから、同氏は「トータルのDXの質と量、スピードを向上させられる」との見解を示した。

しかし、企業のIT部門における専門人材の不足は喫緊の課題であり、自社のみで内製化を進めるのが困難なこともしばしばだ。Google Cloudでは運用やインフラの管理を伴走支援することで、簡単かつ迅速な開発環境の提供に努めている。また、平手氏は内製化を目指す企業向けプログラム「Tech Acceleration Program(TAP)」の提供など、万全のバックアップ体制もアピールした。

③コラボレーション

パンデミックを契機に、場所ではなく人を中心とした働き方が一般的となった。そんな中で組織のアジリティを高めるためには、部門や組織を超えたコラボレーションの実現が不可欠となる。平手氏はDX推進の勘所として「組織内外のコミュニケーションを促進することは、イノベーションの創出につながる」と述べた。

実際に、Google Documentではアプリ上でのコラボレーションを実現すべく「Smart Canvas」機能の活用が増加しているという。同機能は「@」を入力するだけでユーザー情報、ファイル情報などのデータが複数アプリ上から参照・引用できるものだ。これにより、ソフトウエアやアプリの切り替えを求めないシームレスなコラボレーション体験を提供している。

  • Smart Canvasのデモ画面

パートナー体制もバックアップ- ユーザーが適切な”伴走者”を選べるように

続いて、パートナー事業本部 上級執行役員の石積尚幸氏が登壇。自身が担当するパートナーエコシステムの現況とアップデートについて語った。

石積氏がパートナー事業の担当に就いてから2年半が経つ。「当初は専業パートナーへの依存度が高く、多くのお客さまはそうしたパートナーと自社内でDXのためのシステム構築を進めてきた」と同氏は振り返る。

一方、現在は「クラウドの良さを知ったお客さまが、さらにクラウドを活用するか」へ視点が向いているという。そうした中、Google Cloudはデータマネジメントやアナリティクスの文脈で、顧客やパートナーから高く評価を得ているそうだ。

顧客の声を受けて、同社は他社クラウドに精通するパートナー企業にもGoogle Cloudの実装能力を高めてもらうことに注力している。同時にGoogle Cloud専業パートナーにもより知識を深めてもらっており、「最適なソリューションをエンドユーザーに届けられる体制が整った」という。

エンドユーザーのニーズが多様化していることを受け、同社では7月にパートナープログラムを刷新すると発表。顧客評価指標の改定に加えて、それぞれのパートナーが特化している領域を可視化することで、「エンドユーザーが直接最適なパートナーを選べるようになる」世界観を作っていくことを明かした。

  • パートナープログラムの刷新点を説明する石積氏