かずさDNA研究所と東京大学(東大)大学院農学生命科学研究科は、共同でマツタケのゲノムを解読したと発表した。

同研究は、東大 大学院農学生命科学研究科(当時)の黒河内寛之氏(現 国立科学博物館 植物研究部 協力研究員、同 吉武和敏 助教、東大 大学院農学生命科学研究科 水圏生物科学専攻の浅川修一 教授、かずさDNA研究所の田島直幸氏、同 佐藤光彦氏、同 磯部祥子氏、同 植物ゲノム・遺伝学研究室の白澤健太 室長らによるもの。詳細は、4月25日に国際学術雑誌「DNA Research」においてオンライン公開された。

秋の高級食材として知られるマツタケは、近年、生息地の環境悪化などにより収穫量が減少しており、2019年には国際自然保護連合(IUCN)により絶滅危惧II類(危急種)に指定されている。また、生きた樹木の根に共生するため、未だ人工栽培に至っておらず、生息域外保全も難しい状況にあるという。

そんなマツタケを保全するためには、ゲノム情報が重要な基盤となる。すでにマツタケのゲノムはデータベース上に4種類が登録されているが、どれも不完全で多くの断片に分かれており、染色体が何本あるかも不明だったことから、研究の現場ではその情報が充分に活かされていない状況だったという。

そうした中、最近になってロングリード配列解析装置などゲノム解析技術の精度が上がってきたことを受け、研究チームでは今回新たにマツタケのゲノム解読に取り組むことにしたという。

  • 解析に使用されたマツタケ

    解析に使用されたマツタケ (出所:東大)

その結果、マツタケがもつ13本の染色体のそれぞれの塩基配列(合計1.6億塩基対)とミトコンドリアの環状DNA(7.6万塩基対)を端から端までひとつづきで決定することに成功したほか、2万1887個の遺伝子を持つこと、ゲノムの71.6%は転移因子などのリピート配列が占めることが分かったとした。

なお、研究グループでは今後、解読されたゲノム情報を活用し、さらなる遺伝子解析を行うことで、マツタケの大量生産や人工栽培につながる可能性があるとしている。