京都大学(京大)と国立天文台(NAOJ)の両者は4月28日、京大の「せいめい望遠鏡」とNASAの衛星「TESS」を用いて、りょうけん座RS型変光星「V1355 Orionis」のモニタ観測を実施し、最大級の太陽フレア(1032erg)のエネルギーの7000倍という極めて大規模な「スーパーフレア」と、それに伴う「プロミネンス」(約1万℃のプラズマの塊)の秒速1600km(光速の約0.5%)という超高速での噴出を検出することに成功したと共同で発表した。
同成果は、京大大学院 理学研究科の井上峻大学院生、NAOJの前原裕之助教らの共同研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。
太陽以外の星で、最大級の太陽フレアのエネルギーの10倍以上の規模であるスーパーフレアの発生が確認されている。その規模が大きいほど、それに伴って起きるプロミネンスの噴出も高速・大質量なものとなる傾向がある。つまり、恒星ではスーパーフレアに伴い、プロミネンスによってコロナの一部が惑星空間へと放出される「コロナ質量放出」(CME)が、太陽の何十倍もの規模で起きており、太陽のCMEよりも大規模に周囲の惑星環境へ影響を与えている可能性があるという。またCMEは、星が自身の質量の一部を失う現象であることから、恒星進化という観点からも重要な意味を持つとされる。
しかしこれまでに、フレアに伴ってプロミネンスが噴出する様子が観測された例はあったが、その速度がその星の脱出速度を超過していた例はほぼ皆無だったという。そのため、太陽以外の星においてプロミネンス噴出がCMEへと発展したことを検出した確たる証拠はなかったとする。
そこで研究チームは今回、りょうけん座RS型変光星の1つであるオリオン座V1355星に対し、連続的な分光観測を実施したという。なおりょうけん座RS型変光星とは、磁気活動が活発な近接連星系であり、太陽に比べ大規模なスーパーフレアを頻繁に起こすことが知られている。
観測には、京大 岡山天文台に設置されている口径3.8mのせいめい望遠鏡が用いられ、2020年12月下旬に1週間ほど実施された。またそれと同時に、NASAが2018年に打ち上げた系外惑星探査を目的とした観測衛星TESSによる測光観測も行われた。
なお、分光観測によって得られたデータは、フレア中のHα水素線が「ドップラーシフト」現象を起こしているかどうかを調べるための分析に用いられた。また、測光観測によって得られたデータは、観測されたフレアのエネルギーや持続時間を調べるための解析に用いられたとする。