名古屋大学(名大)、生理学研究所(生理研)、科学技術振興機構(JST)の3者は4月24日、マウスを用いた実験で、早期の視覚喪失がもたらす触覚機能向上のメカニズム、つまり「目が見えなくなると触覚が鋭敏になる」仕組みを明らかにしたことを共同で発表した。

同成果は、名大大学院 医学系研究科 分子細胞学分野の橋本明香里客員研究者(公立陶生病院 研修医)、同・和氣弘明教授(生理研 多細胞回路動態研究部門 教授兼任)らの共同研究チームによるもの。詳細は、ライフサイエンス全般を扱うオープンアクセスジャーナル「Cell Reports」に掲載された。

ヒトは自分の周囲の状況を感知するため、視覚や聴覚、触覚などの五感からの情報を用いている。脳内において、視覚情報は後頭部にある視覚野で、触覚(体性感覚)は頭頂部にある体性感覚野で、聴覚情報は側頭部にある聴覚野で、という具合に、それぞれの情報は脳内のそれぞれの「専門部位」で主に情報処理される。

それでは視覚を失うと、視覚野はまったく機能しなくなるのかというと、そうではないという。視覚情報を失った視覚野は、代わりにほかの種類の感覚情報、つまり聴覚や体性感覚情報を処理するようになり、その結果として聴覚や触覚が鋭敏になるという「異種感覚間可塑性」という現象が生じるとする。

同現象は1990年代に提唱されて以来広く知られており、先天盲者が点字を読む時は、それにより触覚を司る体性感覚野のみならず視覚野が活性化され、実際に見る感覚で字を読むことが示唆されている。しかし、その詳細なメカニズムはまだわかっていなかった。

ヒトの脳は1000億個以上の神経細胞と、その約10倍もの数のグリア細胞で構成されている。神経細胞は電気信号や化学信号を用いて情報伝達や情報処理を行い、グリア細胞は神経回路の形成や情報伝達の調節、神経細胞への栄養の運搬などを担う。