NTTドコモは4月25日、スマートフォンや監視カメラなどの映像から、個人情報を削除した上で人物の行動や興味関心を可視化する技術を開発したと発表した。新技術は2次元映像から人物の骨格などの3次元情報の取得が可能といい、3次元バーチャル空間上で実際の人物・顧客行動を追体験するなど、従来とは異なる映像・顧客分析の活用が期待できるという。2023年度末の商用化を目指す。
同技術では、映像から人物の骨格情報などの必要なデータを取り出した後、顔や服装などの個人情報を映像から削除し、人物の骨格を線で描画する。 個人情報を自動で削除するため、プライバシーを保護した上で人物行動の可視化が可能になるという。
また、削除した人物の背景を自動で生成するため、モザイクなどの加工映像と比較してより自然な映像になるとのこと。
さらに同技術適用前の映像は、閉域網で高セキュリティというdocomo MEC網へ送信し、同網内で加工するため、サイバー攻撃の際の情報漏洩リスクを軽減しつつ、人物・顧客行動の分析が可能としている。
加えて、スマートフォンや監視カメラなどで撮影した映像から、人物の滞在時間や目線、物体タッチの情報を取得し、映像から自動作成した3次元のバーチャル空間上への投影が可能という。
例えば、同技術をコンビニエンスストアや商業施設の店舗などで利用すると、顧客人数のカウント、性別・年代推定に加え、顧客の商品タッチ・目線、店内動線・立ち止まりのヒートマップの取得が可能とのこと。
これらの顧客行動データを参照することで、手に取られやすい・目に入りやすい棚や商品、通行量の多いメイン通路、商品購入時に比較検討されやすい商品などを特定でき、商品配置の変更や人流改善などの施策検討、さらにはリアルタイムでの実店舗でのサイネージ変更などの高度な店舗マーケティングへの活用が期待できるとしている。
さらに、メタバースと同技術の融合により、例えば実空間で行動する人々をバーチャル空間へ転写し、バーチャル空間上の人物と共に楽しめるテーマパークなど、多様な新しいサービスに対して活用できる可能性があるという。
同社は同技術について、映像ソリューション導入に関わるハードルを下げ、スマートフォンや既存の監視カメラ映像を使って「実際に使える」「効果を実感できる」ソリューションを目指しているとのこと。
近年、DX推進を始めとする企業におけるデータに基づく意思決定の重要性は高まっている一方で、映像分析ソリューションの導入・活用には、自社課題解決に適切なソリューションを選べない、データの活用法がわからない、など多様な障壁が存在するといい、同技術によりこれらの解決を目指す。
2023年4月から、同技術を用いてコクヨおよびNTT コミュニケーションズと共に、オフィス空間内の人物行動可視化に関する実証実験を行うとのこと。
客観的なオフィス評価の実現に向け、歩行および立ち止まり箇所のヒートマップなどを取得し、コクヨのオフィス内で従業員の人流や行動の解析を行い、同技術の有効性を共に検証するとしている。