「XM」(Experience Management:)として従業員、顧客、ブランドなどのエクスペリエンス管理ソリューションを提供する米Qualtrics(クアルトリクス)は、体験管理を全社員が日常の業務で使う世界を描いている。先に発表した「Qualtrics XM for Frontlines」は、生産性ツールのような存在に向けた同社初の製品となる。

UX(User Experience:ユーザー体験)や体験が重要と言われるようになって久しいが、同社が先月に開催した年次カンファレンス「XM4: The Experience Management Summit 2023」で米Qualtrics 製品・エンジニアリング担当プレジデントのBrad Anderson氏は「企業の多くが体験を測定しているだけであり、管理しているとは言い切れない」と課題に言及した。

  • 米Qualtrics 製品・エンジニアリング担当プレジデントのBrad Anderson氏

    米Qualtrics 製品・エンジニアリング担当プレジデントのBrad Anderson氏

感情だけでなく、感情の強度も識別

具体的には、ごく一部の担当者が年に数回のアンケートやフィードバックから改善点を洗い出しているにすぎない、とAnderson氏は現状を指摘する。

アンケートなどから体験における問題点を得て、それを改善するために実行に移し、再度フィードバックを得るというループを回し続けることがなかなかできていない状態だというのだ。

クアルトリクスは、この問題に以前から取り組んできた。同社は従業員向けの「Employee XM」、顧客向け「CustomerXM」、ブランド向け「BrandXM」などを持つが、2017年に「Qualtrics XM Platform」としてプラットフォーム化し、一人一人のデータを「Experience iD(XiD)」として管理できるようにした。

XiD、インテリジェンスの「iQ」、ワークフロービルダー「xflow」は、クラウドネイティブの「Qualtrics XM Operating System(XMOS)」で利用できる。XiDは現在、110億件を上回る数に達しており、1年前の50億件から倍増以上。「体験のギャップを埋めるために20億以上のワークフローが実行された」とAnderson氏。

年間400万人以上がXMプラットフォームを利用しており、複数のXM製品を連携させることで、体験がどのような影響を与えているのかを可視化することができる「CrossXM」も提供する。

Anderson氏は「XMOSは最大の体験と感情データコレクションとなった。われわれは感情だけでなく、感情の強度も識別できる」と胸を張る。

これを23の言語(絵文字を入れると24言語)でネイティブに実現しており、Anderson氏は「QualtricsのAIは、意図、イライラ、試行錯誤などを理解し、何をやろうとしているのかをリアルタイムで解釈して伝えることができる」という。

それだけではない。同氏は「クアルトリクスはシステム・オブ・アクションなので、自動化機能を使ってアクションを起こして、体験のギャップを埋めることができる」と説明している。

なお、Anderson氏によると、クアルトリクスが有する膨大な体験データの量と数年にわたるトレーニングにより、モデルの精度は80%程度に達しているとのことだ。企業はこれをパーソナライズすることで「90%程度まで高めることができる。残る10%はAIを使って担当者が知る前に新しいトレンドなどを識別できる」と述べた。

「Qualtrics XM for Frontlines」の実現すること

新たに発表した「Qualtrics XM for Frontlines」は、コンタクトセンター、デジタルチームといった顧客に接する最前線の社員向けのツールで、同社のAIと機械学習技術を使い、最適なタイミングで最適な行動をとることを支援するというものだ。

Frontline Digital、Frontline Care、Frontline Locationなどを含み、顧客体験が売上やコストに大きな影響を与えるタッチポイントにおける体験を管理できる。

例えば、Frontline Digitalは、顧客のジャーニーマップに顧客の行動と体験データを組み合わせ、顧客が離脱する前にイライラのポイントを探ることで最適なジャーニーを構築できる「Customer Journey Optimizer」などを用意する。

  • 「Customer Journey Optimizer」の画面イメージ

    「Customer Journey Optimizer」の画面イメージ

Webサイトやアプリにポップアップ表示するフィードバックだけでなく、Webサイト上のクリックやページの読み込みなどの行動からも顧客の体験や感情を理解する「DXA Session Replay」や「Digital Experience Analytics」なども提供する。

Frontline Careは、ソーシャルでの投稿を含め顧客の体験や感情を読み解いたり、AIを使うことで顧客と対面するエージェントの生産性やサービス品質を高めるコーチングもある。

Anderson氏は「アンケート調査を増やすことなく、顧客や従業員が何を話しているのか継続的に聞き、XMOSで機械学習やAIを使って理解したり、取るべきアクションを示唆できる。これを、フロントラインにいる人が全員使うというのがわれわれが描く世界だ。いずれ生産性ツールのように、XMを使う時代がやってくる」と述べている。