クアルトリクスは2月22日、オンラインで記者説明会を開催し、日本を含む世界20か国・地域の従業員エンゲージメント調査の結果を発表した。同調査は、従業員の体験のうちどのような要因が意識や行動に影響を及ぼしているかを理解したうえで、企業がどのような改革を行うべきかの知見を得るために実施。2020年の調査では、世界的に従業員エンゲージメントが前年より向上したほか、従業員エンゲージメントを左右する要因が変わったという。
同社は、企業や組織のエクスペリエンスデータ(顧客・従業員・製品・ブランド)の収集から管理、分析、データに基づくアクションに至るまでを同一プラットフォームで一元的に管理するSaaSや、アンケート調査のプラットフォームを提供している。
今回の調査は2020年10月~11月に日本、中国、香港、シンガポール、米国、メキシコ、英国、フランス、南アフリカなど20か国・地域を対象に、正社員として雇用されている18歳以上の就業者1万1864人(うち日本は800人)に実施した。
コロナ禍も意外な結果に
冒頭、クアルトリクス EXソリューションストラテジー ディレクターの市川幹人氏は、従業員エンゲージメントについて「会社・組織の方針や戦略に共感し、誇りを持って自発的に仕事に取り組んでいるような人をエンゲージしている従業員と捉え、満足度ではなく従業員がどれだけ自発的に力を発揮しているかということだ。われわれでは自発的な貢献意欲、自社に対する愛着・誇り、継続勤務意向、仕事のやりがいの5項目を基準に調査した」と、説明する。
調査結果によると、2020年はコロナ禍に見舞われたものの、2019年と比較して従業員エンゲージメントは日本、グローバルともに上昇した。コロナ禍で企業が従業員をサポートするためにさまざまな対策を行い、従業員の連帯感が高まったことが背景にあると推察しており、日本は前年比12ポイント増の47%、グローバルでは同13ポイント増の66%となった。また、継続勤務意向も日本は同5ポイント増の76%、グローバルはこれまで流動性が高い傾向にあったが、同17ポイント増の70%とそれぞれ向上している。
日本では従業員エンゲージメントを左右する要因として、従来は成長の機会や経営陣のリーダーシップなどが従業員エンゲージメントに大きく影響を及ぼすことが一般的だった。しかし、2020年は「チームの仕事に誇り」「会社の一員であることを実感」「仕事をするときの安心感」をはじめ、チームや会社に対する帰属意識やCSR(企業の社会的責任)活動が従業員エンゲージメントの水準を左右する重要な要因になったことが特徴となっている。
帰属意識に関して、市川氏は「日本の回答者は60%が肯定的に捉えている。そのドライバーは職場で敬意を持って接してもらっており、仕事に誇りを持つつとともにオープンで率直なコミュニケーションが取れ、仕事中に安全を感じ、チーム間の協力が効果的になされていると感じている。エンゲージメントの水準を左右する要因との相関性がある一方で、帰属意識とともに最近では『ウェルビーイング』も重要なテーマだ」と話す。
ウェルビーイングは、心身ともに健康で良好な状態(健康経営、幸福感、充実感)にあることであり、「落ち着いて仕事ができる」「仕事でやる気が出る」「仕事の責任に押しつぶされそうになることがほとんどない」「仕事で自分を前向きに受け止めている」「仕事で信頼関係を築けている」の5つの観点で同社では調査した。
同氏は「ウェルビーイングについては58%の人が肯定的に捉えており、ドライバーは帰属意識と似ており、会社の一員であることを実感、ありのままの自分でいられる、存在価値を認められている、といったことが作用している。帰属意識が高いとウェルビーイングが高く、職位が高いとウェルビーイングも高い」と説く。
このようにエンゲージメント、帰属意識、ウェルビーイングは、いずれも捉えることは容易ではないため、より多くの従業員の声を集め、分析したうえでアクションにつなげる活動が重要だという。
市川氏は「会社に対するフィードバックの機会は2019年は3割を切っていたが、2020年には前年比22ポイント増の51%に拡大した。さらに、フィードバックの機会は重要か否かを尋ねたところ、2019年は34%が重視していたが、2020年には同51ポイント増の85%に急拡大している。機会は拡大したものの、より深くフィードバックの機会を求めていることが判明した」との見解を示す。
加えて、フィードバックに対するアクションが十分か否か聞いた結果、2019年比マイナス5ポイント減の10%となった。フィードバックは得られているものの、アクションは不十分という結果となり、エンゲージメント、ウェルビーイング、継続勤務意向に対して大きなマイナスになるという。
このような調査結果を踏まえ、同氏は「成功のカギを握るのはマネージャーだ。押し付けるわけでないが、役割は重要であり、マネージャーの言動がエンゲージメント、帰属意識、ウェルビーイングの向上に対してプラスの効果になる」と強調していた。
国内における事業戦略
一方、クアルトリクス カントリーマネージャーの熊代悟氏は、日本の2021年における事業戦略に関して説明した。同氏は昨年を振り返り「コロナ禍において想定外の状況下だったものの堅調に成長したことに加え、市場状況に適したソリューションを提供し、エクスペリエンス管理の重要性を再認識した」と述べた。
2021年は継続してwithコロナ、afterコロナによる新たな社会のサポートや国内業務に沿ったテンプレート軍の提供、国内人員の増員などに取り組む。
また、Thought Leadership(思想リーダーシップ)情報発信を加速するため、国内においてエクスペリエンス管理(XM)専門家の増員やブログなどの情報発信の活性、既存ユーザー向けのコミュニティイベント、パートナー企業の増加とプログラムの拡張を行う方針だ。