今やオフィスに出社が当たり前という時代ではなくなった。コロナ禍で定着したテレワークを引き続き導入する企業も多いし、出社とのハイブリッド形式を採る企業も増えた。
そうしたハイブリッドワークにおいて、オフィスの役割は変わろうとしている。単に働くための場所ではなく、社員が創造性を高め、生き生きと働ける場所であることが求められているのだ。
そんな中でオフィスを一新したのが、オーラルケア事業を展開するサンスターグループである。大阪府高槻市に「サンスターコミュニケーションパーク」と名付けた新オフィスを新設。その斬新な設計は、まさにハイブリッドワークの時代を象徴するものになっている。
3月14日~17日に開催された「TECH+EXPO 2023 Spring for ハイブリッドワーク『働く』を再構築する」にサンスターグループ 新規事業開発 執行役員の大岡眞理子氏が登壇。新オフィスのコンセプトや描く未来について語った。
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サンスターグループはオーラルケア事業のほか、ビューティーケア、健康食品、バイク・自動車部品などの事業をグローバルに展開する企業だ。世界22か国に拠点を持ち、従業員は約4,000人。年商は1,350億円に上る。
日本における同社の主要拠点となるのが、大阪と京都の中間に位置する高槻市だ。駅から徒歩数分の場所には同社が所有する未使用の土地があり、そこを有効活用しようという発想から新オフィス建設プロジェクトがスタートした。なお、プロジェクトそのものはコロナ前から始まったものであり、コロナ禍が原因ではないという。
新オフィスの設計にあたり、同社が掲げたポイントは3つある。
まず、消費者理解をより深めるため、社員と商品と消費者がつながるオフィスであること。そして、チームのパフォーマンスを最大化するため、個々の社員が状況に応じて働く場所や環境を選択できるオフィスであること。最後に、社員自身が健康であるため、日常業務の中で健康に対する意識や健康を維持する習慣を得られるオフィスであることだ。
「これらのコンセプトを実現するためには、“オフィス”ではなく“村”であることが必要だと考えました。村に必要なのは、独自の文化や習慣、オリジナルのインフラやシステム、“あれは” “それは”で話が通じる共通認識と距離感、お互いに責任感を持って応える関係性、ものごとを“自分ごと”として捉える空気感などです」(大岡氏)
大切にした3つのキーワード
こうした村の要素を、大岡氏はさらに3つのキーワードにブレイクダウンしていく。
1つ目のキーワードが「健康(幸)」だ。
サンスターグループはオーラルケア事業を展開する企業であり、その点から「お口の健康」の重要性を訴えてきた。さらに、昨今ますます「お口の健康」は全身の健康につながるということが注目されており、全身の健康は最終的に心身の幸せにつながっていくと大岡氏は説明する。すなわち、ここで言う健康とは「健幸」でもあるわけだ。
2つ目のキーワードは「家族」だ。
村を実現するには、そこにいる人々が他人ではなく適度な距離を保ちながらも関係を維持する「家族」であることが望ましいと同氏は言う。元々サンスターグループには、社員の関係をファミリーとして考えるDNAが存在するとのこと。そのDNAを維持することが村をつくる上でも重要なのだ。
そして3つ目のキーワードが「イノベーション」だ。
研究開発からものづくりの拠点としての役割まで、メーカーとしてイノベーションを実現できる場所であることが村には求められると大岡氏は言う。そのためには、さまざまな部署・職種を超えたコミュニケーションを生み出す場でなければならないのだ。
では、この3つのキーワードを実現するには、どのような「場」が必要なのだろうか。
そこでスタートしたのが、新オフィスのコンセプトを考えるワークショップだ。幹部層やマネジメント層ではなく、同社はあえて若手社員を抜擢。ワークショップを通して、現状の働き方を分析していった。
「その結果、サンスターグループの課題が見えてきました。例えば、会議や資料作成が多く、考える時間や学びの時間が短いこと。あるいは、階層や役割のつながりが良くなく、下のレイヤーの社員は何度も同じ報告をする必要性に迫られていることなどが分かりました」(大岡氏)
このような具体的な課題を解決するために多様な仕掛けが盛り込まれ、新オフィス「コミュニケーションパーク」が完成したのだ。