オープンテキストとデロイト トーマツ グループは4月17日、企業での契約書・請求書などの電子データ管理における業務変革とリスク管理態勢の高度化支援を目的とした協業を開始すると発表した。
同日には記者説明会が開かれ、協業の主旨と両社によって新たに提供されるサービスが紹介された。
非構造化データを統合管理できる「One Data Platform」を提供
両社は同協業の下で、オープンテキストの情報管理プラットフォーム「OpenText Extended ECM」と、デロイトトーマツ リスクアドバイザリーが独自開発したAI-OCR(光学文字認識)「Deep ICR」を連携した非構造化データプラットフォーム「One Data Platform」を新たに提供開始する。
同データプラットフォームはデロイト トーマツ グループが販売する。提供価格は要問い合わせで、企業の課題やニーズに合わせて提案する。
2023年10月1日から始まるインボイス制度や、同年末までの宥恕(ゆうじょ)措置が取られている改正電子帳簿保存法への対応で、企業における文書管理のデジタル化が進展することが想定される。一方、業務プロセスのデジタル化に対応するために業務負荷が増えるだけでなく、データ量の増加に伴ってデータ管理上のリスクが増す恐れがある。そうした社会的な背景から、両社は企業のDX(デジタルソリューション)支援の一環として今回の協業を決めた。
デロイト トーマツグループ パートナーの佐藤肇氏は、「電子帳簿保存法対応のために新たなデジタルサービスが導入されることが予想される。だが、従来のデジタル化と同様に場当たり的な対応を進めると、内部統制観点のリスク増加や業務の非効率化、情報のサイロ化が起こりかねない」と指摘した。
アドバイザリーサービスでデータガバナンスを高度化
同データプラットフォームにより、契約書・請求書からメタデータを抽出して経理業務の自動化に役立てられるほか、全社横断的な文書検索など関連データを紐づけした電子データ管理が行えるという。
例えば、紙の請求書を複合機でPDF化し、OpenText Extended ECM上で起票を行って上長が承認すると、Deep ICRによって請求書内の情報が自動抽出され、経理担当者が確認・承認するシステムの入力フォーマットに自動入力される。経理担当者は入力が済んだ属性情報などをPDFと照合し、承認を行えるため、請求書情報の再入力作業を省略できる。
入力された情報は同データプラットフォームで統合管理され、契約書や営業文書、技術文書などと紐づけて管理することができる。
また、既存のERP(Enterprise Resource Planning)やCRM(Customer Relationship Management)とも連携し、システムを横断したデータ管理も可能だという。
オープンテキストによれば、DXを目指してデジタル化を進める結果、システムやデータのサイロ化が起こってしまった企業では、業務担当者が情報をたどれずに業務効率化に繋げられていないケースが多いという。また、個別のセキュリティポリシー適用や組織横断的なデータ検索ができず、管理の一貫性を保てないといったデータガバナンス上のリスクも散見されるそうだ。
企業のそうした課題に対して、データプラットフォーム提供と併せて、デロイト トーマツ グループはデジタル化や個別法令対応など、企業全体を見据えたアドバイザリーサービスも提供する。
オープンテキスト 代表取締役社長の反町浩一郎氏は、「One Data Platformの構築とアドバイザリーサービスにより、データ利活用・プロセス自動化といった攻めのDXと、ガバナンス・セキュリティの強化、リスク管理態勢の高度化といった守りのDXの両立を実現したい」と述べた。