米Veeam Software(Veeam)の日本法人であるヴィーム・ソフトウェアは4月12日、事業戦略発表会を開催した。同社はバックアップ・復元プロバイダーで、世界中に45万社以上の顧客、180の拠点(4500名の従業員)を抱えており、世界中にデータ保護ソリューションを提供している。
執行役員社長の古舘正清氏は冒頭、「データプロテクションは自動化が重要だ。ランサムウェアに耐えうる体制をクラウドを含めて対応していかなければならない」と強調した。
今回の会見で、同社は4つの新戦略を打ち出した。新戦略を紹介する前に、まずはランサムウェア攻撃にまつわる現状を振り返ってみよう。
Veeamが経営者層4200名以上を対象に実施した調査「データプロテクションレポート 2023」によると、95%がクラウドセキュリティに関して「中程度~極めて強い懸念」があると回答している。また、85%がこの1年間でランサムウェア攻撃を1回以上受けており、82%がシステム停止の発生後、手作業でデータの復元を行っていることが分かった。
データセキュリティを取り巻く世界も目まぐるしく動いている。コロナ禍による企業のDXが加速したことで2020年4月以降、データ量は急増。2022年2月からはロシア・ウクライナ戦争による国際情勢の不安定化で、ランサムウェアを含むサイバー攻撃が急増した。
また2022年4月に警視庁がサイバー犯罪対策強化のため、「サイバー警察局」「サイバー特別捜査隊」を発足。ますます、サイバーセキュリティ対策が企業の事業戦略の重要な要素になっている。
「業界や規模を問わず、どのような企業もランサムウェア攻撃を受ける可能性がある。事前にバックアップの体制を講じることも、重要な対策となる」(古舘氏)
同社はこれまで、データ保護ソリューションのリーダー企業を目指し、エンタープライズビジネスを拡大してきた。国内においても、KDDIには統合バックアップを提供し、日本赤十字社にはランサムウェア対策となるバックアップサービスを提供している。
また、顧客数が2500を超えるパートナービジネスの基盤も確立し、100社を超えるサービスプロバイダービジネスや地域拠点も拡大してきた。
「業界問わず大手企業で弊社サービスの導入が加速している。ソフトウェアだけで提供し、既存のハードウェアをそのまま利用できる統合バックアップが高く評価されている」と、古舘氏は説明した。
また同社は、2023年2月に新ソリューション「Veeam Data Platform」を発表している。同ソリューションは、データセキュリティ、データ回復、特定のインフラにロックインすることのないデータバックアップと自由度の高いデータ移動を提供するとしている。
そして同社は今後の事業戦略として、新たに4つの戦略を打ち出した。
1つ目の戦略は、OEMサポートビジネスの開始だ。日本のサポート体制を拡充するため、サポートスタッフを5倍に拡大する。加えて、L2対応/サポート担当役員を積極的に採用し、難易度の高いインシデントに対応していく考え。
2つ目の戦略は、チャネルパートナービジネスの拡大。大手チャネルパートナーとの連携強化することでSMB向けビジネスを拡大させる。また国内初の「Veeam認定教育センター」を開設し、エンジニアのレベル向上、エンドユーザーに質の高いVeeam環境を提案・構築を目指していくとのこと。
3つ目の戦略として、地域拠点も拡大する。今後、九州支社を開設する予定で、関西・東海エリアに加えて、九州エリアのサポート体制を強化していく。
4つ目の戦略は、業界別ソリューションの提供だ。パートナー企業と連携し、業界別に特化したサービスを拡充し、各業界で異なる課題やシステム環境に対応させていく。加えて、業界別に特化したWebページの制作にも注力する。例えば、業界の課題ごとにバックアップ環境構築のステップ、導入・運用事例、Q&Aなどを紹介するとのことだ。
「今後、注力する業界は、ランサムウェアの対策が急務である『医療』と『製造』、クラウド化が加速している『自治体』、Microsoft 365のバックアップの需要が増している『教育』の4つだ。業界ごとに異なる課題やシステム事情に合わせて最適なソリューションを提供していきたい」と、古舘氏は説明していた。