仕事において「上手くいくチーム」と「上手くいかないチーム」がある。上手くいくか、いかないかは決して“何となくそうなっている”わけではない。そこには明確な理由があり、成功のためのルールが存在する。そのルールとは何か。
3月14~17日に開催された「TECH+EXPO 2023 Spring for ハイブリッドワーク『働く』を再構築する」では、17日の基調講演にクロスリバー 代表取締役の越川慎司氏が登壇。上手くいくチームが実践している5つのルールについて解説した。
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“最強チーム”が実践している「5つのルール」
越川氏は「上手くいくチーム」を「最強チーム」と名付けた上で、最強チームが実践する成功のルールとして次の5つを紹介した。
このうち、「正しく対話する」のポイントは“正しく”という部分だ。対話というと会議で話し合うことを想像するかもしれないが、「対話と会議は違う。最強チームはむしろ会議を減らして対話を増やしている」と同氏は言う。
では、正しい対話、あるいは正しくない対話とは何か。
同社が2019年9月に調査を行った結果、「上司から言われてモチベーションが下がる言葉」として最も多かったのが「最近どう?」だった。
一見すると無難な声がけにも思える言葉だが、多くの人は上司に「最近どう?」と声をかけられても答え方が分からずストレスに感じるという。単に「最近どう?」と聞かれても、週末のプライベートな話をすれば良いのか、体調の話をすれば良いのか、仕事の話をすれば良いのか分からないというわけだ。
対話で重要なのは、「この人は私に興味を持って話しかけてくれている」と相手に感じてもらうこと。「最近どう?」のような曖昧な声がけでは、むしろ相手の時間を奪ってしまうだけで、チームとしての関係性構築にはつながらないのである。
「優秀なリーダーは『最近どう?』ではなく、『僕は週末サッカーを楽しんだけど、あなたはどうだった?』など、自己開示してから問いかけます。『最近どう?』と聞くなら、腹を割って話すことが大事。そうでないなら、今日から『最近どう?』は禁止してください」(越川氏)
では、上手くいっているチームはどう声がけをするのか。
最強チームがやっている「対話」のコツ
越川氏によると「今ちょっと良いですか?」だという。
この声がけは、相手が「面倒だな」と思わない関係性が築けているからこそ可能なものだ。実際に、上手くいっているチームはそうでないチームと比べて、8倍もこの声がけを使っていたそうだ。
さらに越川氏は、この「今ちょっといいですか?」を増やすために「感情を共有することが大事」だと続ける。特に怒っているわけでもないのに上司がムスッとした表情をしていたら、部下は萎縮し、心理的安全性が失われてしまう。そんな状態では、部下から上司に対して「今ちょっといいですか?」という声がけは生まれないだろう。
では、どうすれば感情を共有できるのか。
感情の共有に役立つリアクション
越川氏は、「人間は7割以上の情報を目から入れるので、感情を共有できるかどうかは上司の表情で決まる」と指摘する。
「DXの前に“表情トランスフォーメーション”から始めてください。上司の方は口角を2cm上げることを意識しましょう。調査によると、それだけで意味のない会議が8%も減ることが分かっています。なぜなら、会議における無駄な時間は、部下から上司への過剰な気遣いや忖度で生まれるからです」(越川氏)
ただし、現在はまだマスクを着用していることも多く、表情が見えにくいこともある。そんなときは、「首の動き」を意識すると感情が伝わりやすくなると同氏はアドバイスする。首を縦に振る、つまりうなずく動作をすることは「あなたの話を聞いています」「受け入れています」という肯定的なメッセージになる。それだけで、上司が怒っていないことが伝わり、心理的安全性も高まっていくのだ。
また、会議などでは「反対意見を出した人にこそうなずくことが大事」だと越川氏は言う。
「社内会議には、情報共有のための会議、何かを決定するための会議、企画・アイデア出しのための会議の3種類しかありません。このとき重要なのは会議の目的を1つにすることです。企画・アイデア出しの会議では、アイデアを出すことに集中すべきで、決定しようとしてはいけないのです。仮にアイデアが非現実的なものであっても、そのときはアイデアを出したことを肯定し、しっかりとうなずくことが大事になります。その上で、決定のための会議で意思決定者がしっかりと決めれば良いのです」(越川氏)
人のやる気はあてにならない - 会議の「内職率」を下げるカギ
オンライン会議と言えば、管理職が気にするのが「参加者の内職」だ。越川氏によると、実はオンライン会議時の内職率は一般的に41%にも上るという。つまり、4割の人は会議を「聞いていない」のだ。ちなみに対面の会議であっても3割は話を聞いていないそうだ。
この現状にどう対処すればいいのか。
越川氏が示したデータによると、会議に参加した人が内容を覚えているのは「最初の1分と最後の5分」で話された部分だけだ。
「会議では最初の1分と最後の5分にエネルギーを注ぐべきです。最後の5分でやるべきことは、会議やプレゼンのまとめスライドをつくって示すこと。そのとき、重要なのはまとめスライドに“参加者に求めるアクション”を必ず入れることです。アクションにつながらない会議は意味がありません」(越川氏)
もっとも、ただ求めるアクションを記載するだけでは実際の動きにはつながらない。そこで同氏が提案するのがまとめスライドに「期日と期限を入れる」ことである。これだけで、参加者のアクション率は約2倍に増えるそうだ。
最初の1分でやるべきこと
では、最初の1分でやるべきことは何か。
越川氏によると、人間は適度に緊張したとき、脳内ホルモンであるドーパミンが分泌され、パフォーマンスが上がる。このドーパミンの分泌を促すことが、最初の1分で行うべきことである。
そのために効果的なのが、参加者の名前と役割を告げて、軽い緊張を起こすことだという。「最初は鈴木さんから発表してもらいます。その後は~」のように、参加者の名前を呼びながら、会議の流れを確認するだけでも良い。
こうした工夫をすることで、会議主催者の満足度はプラス43%、参加者の満足度はプラス28%高まったという。また、しっかり時間内に終わる会議だった場合も31%増加したそうだ。