岡山大学は3月31日、2つの異なる地点より採取したリュウグウ粒子に含まれるアミノ酸の濃度をそれぞれ求めた結果、炭酸塩の多い粒子にはアミノ酸の「ジメチルグリシン」(DMG)が多く含まれ、他方の粒子には同アミノ酸が検出されなかったことを示し、太陽系初期の小惑星でアミノ酸が形成され、この時に水が重要な役割を果たしたことが明らかになったと発表した。

同成果は、岡山大 惑星物質研究所のクリスチャン・ポティシェル助教を中心とした20名以上の共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

およそ46億年前の原始太陽を中心とする原始惑星系円盤において、太陽系外縁で形成された小惑星には、大量の氷が含まれていたとされる。そして、その氷の中にはアミノ酸を含む多くの有機化合物が含まれていたという。やがて、放射性短寿命核種が崩壊することで放出される熱エネルギーが小惑星を温め、氷は溶けて液体の水へと変化し、水質変質が起き、ストレッカー合成やフォルモース反応などにより、アミノ酸を含む新しい有機物が作られたことが示唆されていた。

地球のすべての生命は、多種多様なタンパク質の活躍によって成り立っており、その最小単位がアミノ酸だ。地球上で生命が誕生するにあたり、相当量のアミノ酸が必要だったと推測されている。これまでの研究から、アミノ酸が形成される可能性のある環境として、初期地球環境と地球外環境が検討されていた。

ほとんどのアミノ酸には、光学異性体として左手型と右手型の2つの形態があることが知られている。しかし、地球の生命は左手型のみでタンパク質を構成しており、この左手型を過剰に含む隕石は、炭素質コンドライトのみが知られていた。そのため、生命はこの隕石からアミノ酸を採取したのではないか、と考えられている。

隕石は小惑星の欠片であると考えられるため、隕石中に含まれるアミノ酸は、2通りの形成パターンが考えられる。小惑星が集積する前に形成されたとする説と、小惑星が集積した後に形成されたとする説だが、まだ決着はついていないという。そこで研究チームは今回、リュウグウ試料のうちの2つの粒子を分析し、その中に含まれるアミノ酸の同定とその濃度を決定することにしたとする。