パナソニックは3月30日、同社の充電池の名称を「エネループ」に統一すること、ならびに4月25日より容量をアップさせた新製品を発売することを発表した。

  • 2023年4月25日より発売される新「エネループ」のセルとパッケージ

    2023年4月25日より発売される新「エネループ」のセルとパッケージ (画像提供:パナソニック)

乾電池代わりに手軽に使える充電池「エネループ」

「eneloop(エネループ)」は2005年に旧三洋電機(2011年にパナソニックが完全子会社化)が掲げたビジョン「Think GAIA(シンク・ガイア)」の第一弾商品として発売を開始。自然放電が少なく、買った直後に充電不要で使用でき、かつ1年間放置してもエネルギー残存率も約85%と長期保存にも向く充電池(2次電池)として、約1000回の繰り返し充電が可能といううたい文句(当時)と合わせて、一般消費者市場における充電池に対する認知拡大の緒端となった存在。三洋電機がパナソニックに買収された後、2013年にデザインの変更が行われたが、その後もパナソニックが2008年より販売していた充電池「充電式エボルタ」と2シリーズが併存する形で販売が続けられてきた。

  • パナソニック/三洋電機の充電池の歴史

    パナソニック/三洋電機の充電池の歴史。日本ではエネループと充電式エボルタの2系統が併売されてきた。一方、海外では旧ロゴのままのエネループが現在も販売されている。実は、今回の新エネループも欧州では先行して旧ロゴモデルで販売済みだという (資料提供:パナソニック)

実はエネループ、数年に1回の割合でモデルチェンジを繰り返してきたが、単3形も単4形も容量は2005年の発売以来、これまで単3形が1900mAh、単4形が750mAhで変更されてこなかった。これに関して、合同取材にて説明を行ったパナソニック エナジーのエナジーデバイス事業部 コンシューマーエナジービジネスユニット マーケティング部 二次電池商品企画課の黒田靖 主幹は、「さまざまな電池に要求される性能から、バランスが良いものを選択してきた。例えば容量を引き上げても、自己放電能力が劣化したり、充電サイクル回数が低下したりといった問題があり、これまで変えてこなかった。一方で、使い勝手を落とさないことをコンセプトに自己放電や充電サイクルといった部分の性能向上を続けてきた」と説明する。

そもそも、エネループが18年前の2005年に登場した当時、そのコンセプトは、乾電池代わりに気軽に使える充電池、というものであり、買ったらすぐ使える乾電池に限りなく近づけることを目指して開発されるなど、繰り返し充電回数と自己放電性能が重視されてきた。そうした中、今回、充電サイクルを落とさずに容量アップする手法にめどが立ったことで、充電式エボルタの統合という話が持ち上がり、エネループと充電式エボルタの両方のコンセプトを踏襲していくという形で製品化が進められたという。

  • エネループのコンセプト

    エネループのコンセプト (資料提供:パナソニック)

充電池はエネループ、乾電池はエボルタに統一

具体的には、エネループと充電式エボルタを併売する中、容量アップに向けた技術の基礎的な検討が2019年ころに行われ、2020年より実際の商品化に向けた開発がスタート。当時はまだ、エネループと充電式エボルタのブランドを統一するという話は議論はされていたものの、決まっておらず、最終開発品の性能や市場のエネループに対する認知度(同社調べでは近年では60%ほどとのこと)、充電式エボルタの立ち位置(乾電池ではハイエンド商品の位置づけだが、充電池では“お手軽モデル”にも使われている)、乾電池と充電池の用途に違いがなくなってきたことなどを背景に、乾電池は「エボルタ」、充電池は「エネループ」に名称を統一することが2022年に決まったという。

  • 今後のパナソニックとしての電池の方向性

    今後のパナソニックとしての電池の方向性。乾電池がエボルタ系統、充電池がエネループ系統と分けられることになる (資料提供:パナソニック)

「単に充電式エボルタを辞めるというわけではなく、1回の使用時間が長いという特長を受け継いだのが新たなエネループ。結果として充電式エボルタに比べても容量アップと充電サイクルの向上が果たされ、エネループとしての使い勝手を落とすことなく、性能向上を実現できた」(同)とする。

新製品の特長は、単1形が容量6000mAh(現行品は5700mAh)、単2形が容量3200mAh(現行品は3000mAh)にそれぞれアップしたほか、これまで明確な名称がついてなかったものが、エネループに統一された。エネループライトは単3形が容量1050mAh(現行品は1000mAh)、単4形が容量680mAh(現行品は650mAh)にそれぞれアップしたほか、いずれも充電サイクルが1500回(現行品は1200回)に引き上げられた。スタンダードモデルのエネループも単3形が容量2000mAh(現行品は1900mAh)、単4形が容量800mAh(現行品は750mAh)にそれぞれアップされたモデルへと変更となる(エネループ プロについては変更なし。また充電サイクルの表記については、2019年3月のJISの改正により、新規格での回数表記となっており、旧JIS規格での表記よりも少なくなっていることに注意)。

  • エネループ各種の現行品と新製品の性能比較

    エネループ各種の現行品と新製品の性能比較。今回、地味な話題だが、生産終了とされていたエネループライトが復活している点も注目。エネループライトの役割としては、充電池初心者に向けて、ホームセンターやスーパーマーケットに置いてもらって、充電池ユーザーのすそ野を拡大する役割を持たせているという、ある種の戦略製品として位置付けられているとのこと (資料提供:パナソニック)

具体的な容量アップを実現した技術としては、活物質と添加剤の適正化により、くり返し使用時の電解液消費を減少する新規正極の開発と従来比での増量、負極の材料の適正化によるガス吸収性の向上、組成の改良によって電極材料の劣化を抑制することに成功した新電解液の採用と従来比での減量により、充放電を繰り返していくたびに正極に取り込まれて減少していく電解液の消費を抑え、電解液を減らしても充電サイクル数が減少しないようにしたとする。「基本は今の使い勝手を落とさないとうな条件を備えたものが開発できた」(同)と、活物質の増量による容量アップ、ならびに繰り返し回数を犠牲にすること無しに電解液の量を削減することで、従来のエネループの良さを残しつつ、充電式エボルタの容量を超えることに成功したとする(充電式エボルタの容量は単3形が1950mAh、単4形が780mAh)。

また、4月より販売される最新版のエネループ(単3形/単4形モデルのみ)は従来の電池ケースにもなる樹脂パッケージを紙パッケージ(エシカルパッケージ)に変更(今回、容量アップなどが行われなかったエネループ プロも変更)。これにより包装材の使用量を約45-70%削減することができたという。

  • 単3形/単4形のパッケージをエシカルパッケージに変更

    単3形/単4形のパッケージをエシカルパッケージに変更することで包装材の使用量を削減することに成功している (資料提供:パナソニック)

第5世代エネループはサステナブルの夢を見るのか

2005年に発売されて以来、エネループはマイナー、メジャーチェンジを繰り返してきたが、今回発表された2023年モデルは大きく分けて第5世代目に相当するという(第1世代は2005年発売モデル、第2世代が2009年発売モデル、いわゆる王冠マークが付いたモデル、第3世代が2011年モデルで王冠マークの下に線が引かれたモデル、第4世代が2013年のパッケージデザインが変更されたモデル、2015年には自己放電が従来の70%/5年から70%/10年に引き上げられたがマイナーチェンジで第4.5世代相当。これ以外にも2006年の正極出代改善による機器との接触性改善や電池チューブからラベル化による耐久性改善、2007年の電池ラベルの抗菌加工開始、2016年の長期放置後の放電時の作動電圧改善による長期放置後の作動性向上など、ひっそりと機能向上が図られてきた。また、この間、デザインには一貫して水田一久氏が関わってきた)。

  • エネループの進化の歴史

    エネループの進化の歴史。今回、第4世代から第5世代に変更されたが旧ロゴ時代のように王冠マークが付くことはない。見分け方としては、正極側の絶縁リング(フチ)の色が第4世代はグレー、第5世代は白になる点とのこと (資料提供:パナソニック)

実に18年間にわたって充電池として国内外で幅広い用途に活用されてきたエネループだが、まだ乾電池は知っているけど、充電池を知らないという人もそれなりに居るということも同社では電池教室といった子ども向け授業などを通して感じているとしており、今回のブランド統一を機に、乾電池はエボルタ、充電池はエネループという点をしっかりと訴求していき、選ばれる存在になりたいとしている。

同社では乾電池を買うのか、それとも充電池を買うのかについては、現状、購入者のライフスタイルに寄るところが大きいのではないかと見ている。そうした意味では、SDGsやESG、グリーントランスフォーメーション(GX)といった環境を意識した取り組みや技術開発などが日々、話題になってきた昨今、持続可能な社会の実現という意味で、使い終わったら自治体の指示に従って捨てる必要がある乾電池ではなく、家電量販店などで回収を行っている充電池を選択しようという人が増えることも期待される(乾電池を店頭で回収している家電量販店もある)。エネループは元々、“使い捨てない”、 “地球環境に負荷をかけない”をテーマに開発されたものであり、ある意味、時代を先取りしてきた存在でもあるといえる。

かつては、ラメ入りやディズニーコラボなどさまざまな限定モデルも発売し、注目を集めたこともある。今回の第5世代品の発売を機に、そうした限定モデルの復活は多くの人の耳目を集めるのではないか、という問いに黒田氏は、「これまで研究開発に注力してきたので、現段階ではそこまで考えていない」とする一方、今後、ユーザーの反応を見ながら、検討していきたいとしていた。2015年には10週年記念モデルを発売した経緯もあり、そうした意味では、20周年を迎える2025年には何らかのそうした限定モデルが出てくれることも期待できる。

  • 国内でのエネループの歴史

    国内でのエネループの歴史 (資料提供:パナソニック)

まだまだ家庭内で乾電池を使うシーンは多いが、そこに乾電池からエネループに置き換えるだけで、使用者はちょっとだけ地球にやさしくなれる。そんなエネループが、これからどんな進化を遂げていくのか、今後も期待したいところである。