GLOBAL WORKを運営するアダストリアは今般、デイリーニーズに特化したファッションを提案する新業態として「GLOBAL WORK Smile Seed Store」を展開することを発表した。同ブランドではこれまでニューファミリー層のオンシーンを得意としてきたが、なぜ新業態を展開することにしたのか。
今回は、“お客さまの日常にそっと寄り添う”をテーマにデザインされているSmile Seed Storeの店舗の様子をお届けするとともに、アダストリアの執行役員 グローバルワーク営業本部長である太田訓氏に聞いた新業態の詳細と同社のマーケティング戦略を紹介する。
名前の由来はグローバルワークのロゴ
「最近のアパレル業界は『ただ安いだけは買ってもらえない』ということが当たり前になってきています。どんな商品ならお客様に納得してもらえるのかを考えた時、既存のGLOBAL WORKよりも身近な場所で日常使いできるブランドにビジネスの勝機があるのではないかと考えたのが、このSmile Seed Storeの発足の経緯です」と、太田氏は語る。
Smile Seed Storeは、顧客の価値観・生活様式が変化する中、年代を問わず身近な地域とのつながりや日常の大切さを感じたいという、暮らしの需要に応えるべく、これまでニューファミリー層のオンシーンを中心に商品展開してきたグローバルワークが、デイリーニーズに特化したファッションを提案する新業態となっている。
3月15日に公式WEBストアである「.st(ドットエスティ)」にて販売を開始し、17日にはイーアス高尾店(東京都)、24日にはイオンモール船橋店(千葉県)とリアル店舗も次々とオープンし、夏頃までには生活者にとって身近な商圏を中心に6店舗を展開予定だという。
「Smile Seed Storeは、『気持ちのいい日常』が大きなコンセプトになっています。日常のお買い物のついでなどのシーンで、どんな年代の方でも訪れやすい地域に根差したお店になっていきたいと思っています」(太田氏)
どんな年代にも、と太田氏が語ったように、Smile Seed Storeは既存のレギュラーラインであるGLOBAL WORKとの違いとして「エイジレス」をコンセプトとして掲げている。
商品カテゴリーに「WOMEN」、「MEN」、「KIDS」といったラインアップを取りそろえているのはもちろん、インナーウェアやルームウェア、アクセサリーといったアイテムも充実しており、幅広い年代が日常使いできるのが特徴となっている。
そんなGLOBAL WORKと似て非なるSmile Seed Storeだが、その名前は「GLOBAL WORKらしさ」を残したという。
「今回採用された『Smile Seed Store』という名前の『スマイルシード』は、GLOBAL WORKのロゴのことを指しています。このロゴは創業20周年を迎えた2015年にリブランディングを行った際に刷新したもので、『幸せのためにあるブランド』というイメージから笑顔とGLOBAL WORKの頭文字である『g』を組み込んでいます。このロゴのことを社内では、『スマイルシード(笑顔の種)』と呼んでいたのですが、今回、新たな業態を展開するにあたって、この内々で使用されてきた名前をブランド名に冠することを決めました」(太田氏)
この名前のようにSmile Seed Storeは、グローバルワークで培われたものを最大限に生かしながら、3F(Fashion + Function = Feeling)を担保する品質を維持した「永く愛される日常着」を目指していく構えだ。
グローバルワークの製品の特徴のこと。
Fashion:着回し、色、柄、素材、シルエット、シーン演出
Function:機能性、素材特性、パターン
Feeling:日常生活の中で、肌触り、質感、着心地を感覚的に“良い”と感じることができる
Smile Seed Storeを通じて社員の多様なキャリアも創造
ここまでSmile Seed Storeが顧客にもたらす価値を伺ってきたが、この新たな事業への進出は「社内的な価値」にも寄与することが期待されているという。
「今回、身近なマーケットへの出店と、日常使いできる価格帯でお客様に納得していただけるクオリティの商品を実現するには考えるべきは、効率的な店舗運営でした」(太田氏)
GLOBAL WORKの店舗に所属する社員数は、店舗の規模によっても異なるが、多い所では3~4名いるという。また、アルバイトやパートの人も入れるとその数はかなり多い。
一方でSmile Seed Storeは、GLOBAL WORKの最小規模の店舗と同じくらいの人員数で全ての店舗を運営できるよう、洋服が並べられている箇所には、商品の特徴・機能性やカラーバリエーションを紹介するPOP(Point of purchase advertising)が付けられており、顧客が店員を呼ばなくても有意義に買い物が続けられるという仕掛けが施されている。
この取り組み以外にもさまざまな「人の効率」について考え直すトライアルを行うことで、成果が出たものは内部的に仕組みを労働者の確保が難しい地域などに転用していきたいという。
「大きな町だけでなく、さまざまな地域で展開していくことを想定しているので、将来的に地元に帰りたいと考えているスタッフにとっても、このSmile Seed Storeの展開は大きな意味があるのではないかと思っています。このSmile Seed Storeが社員の新たなキャリア形成を考えるきっかけになってほしいです」(太田氏)
最後に太田氏に今後の展望を聞いた。
「今回、お客様に納得していただける金額と品質を担保するために、弊社の持つ生産背景すべてを使い、方々に手を尽くしてようやく実現に漕ぎつけることができました。つまり今回のSmile Seed Storeは、弊社がいろいろな事業を展開しているからこそできたことだと思います。弊社はこれまでもマルチブランド展開で幅広くお客さまに寄り添った商品を展開してきましたが、このブランドを通じてこれまで接点の少なかった、よりお客さまの生活に身近なマーケットを開拓していきたいと考えています」(太田氏)